2021年09月03日19時26分掲載  無料記事
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国際

最も支援が必要な時にアフガニスタンから人も資金も逃避させる “国際社会”  Bark at Illusions

 欧米を中心とする “国際社会” は、アフガニスタンに住む人々のことなどどうでもいいようだ。米国の占領に協力してきたアフガニスタン人がタリバンの報復を恐れて国外に退避する必要があるのは理解できる。しかしタリバンのカブール制圧後、大使館職員など現地にいた外国人や現地の協力者が退避するだけでなく、 “国際社会” はアフガニスタン中央銀行が保有する資産の凍結や、経済支援を停止するなど、アフガニスタンへの資金の流入まで阻止している。 
 
 バイデン政権はアフガニスタン中央銀行が米国に保有する約95億ドルの資産を凍結。国際通貨基金(IMF)や世界銀行もアフガニスタンへの支援を停止した。 
 こうした措置の結果は明白だ。早稲田大学窪田隆教授(NHKニュース7、21/8/22)は、次のように説明する。 
 
「アメリカが十分資産を凍結できるという状況ですので、(国際社会からの)条件を全部飲まないとタリバンはかつかつの状態から解放されないと。違法ビジネスに手を染めていくというのが……普通のパターン」 
 
 しかもアフガニスタンの財政難の影響は、タリバンだけでなく、市民生活にも及ぶ。ニュース7(21/8/25)は、「人々はお金がなくて困っている。大変な状況になっている」と嘆くアフガニスタン市民の声を伝えている。「ほとんどの銀行が業務を停止」しており、「物価も高騰……小麦粉などの価格はこの1週間で、通常よりもおよそ50%上がって」いるそうだ。 
 
 世界食糧計画(WFP)アフガニスタン事務所のマリーエレン・マクグローティ代表(Democracy Now、21/8/24)は、国際的な支援が停止された場合の結果について、次のように警告し、今こそ国際社会はアフガニスタンを支援すべきだと訴える。 
 
「アフガニスタンへの資金援助を停止するという決定は、本当に恐ろしい結果をもたらすでしょう。アフガニスタンの1400万人の人々が飢えに苦しみ、200万人以上の子どもたちが栄養失調に陥っており、シェルターや医療のニーズが非常に高いのです。……今、資金を削減することは、不安定さと絶望を助長するだけです。……もし国際社会が資金の削減を検討しているのであれば、私は再考することを強く勧めます。今こそ、アフガニスタンで行動すべき時です。今こそ、アフガニスタンの人々は、国際社会が彼らに寄り添うことを必要としているのです」 
 
 WFPはアフガニスタンに残って活動を続けることを決めた。日本のNGO、ペシャワール会も現地で活動を再開させた。 
しかし、欧米を中心とする “国際社会”は、アフガニスタンからの自国民の退避にばかり注目している。 


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