2021年09月16日23時26分掲載  無料記事
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遺伝子組み換え/ゲノム編集

サナテックシード ゲノム編集トマトの一般向け出荷を開始

 サナテックシードは9月15日、ゲノム編集高GABAトマト「シシリアンルージュハイギャバ」の一般向け出荷を開始したと発表した。サ社の「シシリアンルージュハイギャバ」は、ゲノム編集によりGABA含有量を高めた系統をもとに交配で作られたF1種としている。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 サナテックシードは4月23日、ゲノム編集トマトの苗の無償配布の応募者が5千人を超え、5月中旬から順次配布を始めると発表していた。同時に、青果物の販売は苗の配布のとどめ、21年冬から加工食品として販売するとしていた。しかし、モニターからの要望が多かったとして、当初予定していた加工食品(ピューレ)に先駆けて、青果のトマト販売を開始したという。生産は、熊本県の契約農家に委託しているという。 
 
 このトマトは、同社の開設したネットショップからの販売で、2キロで約6千円、3キロで約7千5百円という高い価格が設定されている。一方でサ社は、この数年、トマト農家は価格暴落で厳しい状況にあるとして、「相場よりできるだけ高い価格で購入します」「契約農家が安心してトマトを作ることができるようにしたいと思っています」としている。さらに、契約農家として農福連携に力を入れている事業者と共にやっていきたいと、農家に「寄り添う」姿勢を見せ、ある種の攻勢に出ている。 
 
 この高い価格には農家も驚いている。長野県阿智村の有機農家は15日、「この価格だったら作付け希望者が殺到するのでは。これは由々しき事態」とツイッターで呟いている。 
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  阿智村有機農業日記 @kerokero100show 
  3キロ7500円(キロ当たり2500円)ってご祝儀相場で 
  しょうか(◎_◎;)。 
  ウチらの無農薬トマトの出荷価格はキロ450円です 
  ので、大変破格な価格です。この価格だったら 
  作付け希望者が殺到するのでは(*_*)。これは 
  由々しき事態です。キロ450円は大玉トマトの価格 
  で、ミニサイズでは600〜700円です。 
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  https://twitter.com/kerokero100show/status/1438017067790135298 
 
 サナテックシードはゲノム編集高GABAトマト「シシリアンルージュハイギャバ」について、消費者庁に対して機能性表示の届出を行なっていないが、今後届出を行う予定だとしている。 
 
・サナテックシード, 2021-9-15 
ゲノム編集トマト青果物の販売開始のお知らせ 
https://sanatech-seed.com/wp-content/uploads/2021/09/%E3%82%B1%E3%82%99%E3%83%8E%E3%83%A0%E7%B7%A8%E9%9B%86%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%88%E9%9D%92%E6%9E%9C%E7%89%A9%E3%81%AE%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B-1.pdf 
 
・サナテックシード, 2021-4-23 
「シシリアンルージュハイギャバ」の 苗の無償配布開始(申込は終了)のお知らせと一般販売について 
https://sanatech-seed.com/ja/210427/ 
 
・NHK, 2021-9-15 
「ゲノム編集」で品種改良のトマト 一般への販売開始 国内初 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210915/k10013259991000.html 
 
 日本で最初のゲノム編集作物であるゲノム編集トマトの市場流通が、大きなニュースともならず、目立った消費者の反対のない中で進められていると言わざるを得ない。この17日には厚労省の遺伝子組換え食品等調査会の開催が予告され、京大・木下助教などが開発した世界初のゲノム編集動物となるマダイの「届出」が「受理」されることがほぼ確実視されている。これらのゲノム編集作物や魚は、外来遺伝子を組み込むことなく、遺伝子の一部機能を無効にすることで、環境影響や食品としての安全性を審査されることなく、これまでの遺伝子組み換え規制を潜り抜けている。ゲノム編集に伴う目的外遺伝子を改変してしまうオフターゲットも、実際の全ゲノムをチェックすることなく、単なるシミュレーションで問題なしとされている。安全性が着実に担保されているとは言えない「審査」が行われている現状は問題だ。 
 
 もう一つの問題は、こうしたゲノム編集食品に表示が不要とされていることだ。サナテックシードは、自主ラベルでトレーサビリティを確保するとしている。しかし、トマトやピューレの形で出荷される時はそうであっても、再販時やレストランなどで供された場合には、その表示が確実に担保されることはありえないだろう。ゲノム編集食品の制度上の欠陥が、消費者自身が何を選んで食べるかという《選択する権利》を奪っている。遺伝子組み換え食品にも共通するが、こうした遺伝子操作食品の表示を厳格にすべきだ。 
 
 ゲノム編集トマトが「届出受理」されるまで、世界中でゲノム編集作物は米国のカリクスト社の高オレイン酸大豆だけであった。日本は、世界に先駆けて、こうした食の安全性をなおざりにしたゲノム編集食品の実質的な承認が着々と進んでいる。なし崩し的な「ゲノム編集大国」化が濃厚といえるだろう。早急な歯止めが必要だ。 
 
【関連記事】 
・ゲノム編集トマトの受理撤回を求める意見書を提出 日本有機農業研究会など 
http://organic-newsclip.info/log/2021/21021105-1.html 
・ゲノム編集トマトの流通が現実に まず家庭菜園用から供給 
http://organic-newsclip.info/log/2020/20121096-1.html 
・日本初のゲノム編集食品の「届出」が間近に 
http://organic-newsclip.info/log/2020/20121095-1.html 
・ゲノム編集トマト 米国農務省の非規制該当を確認 近く商品化か 
http://organic-newsclip.info/log/2020/20081060-1.html 
・厚労省調査会 ゲノム編集魚類の議論を始める 
http://organic-newsclip.info/log/2021/21021105-2.html 
・ゲノム編集の牛に組み込まれた抗生物質耐性遺伝子 
http://organic-newsclip.info/log/2019/19091004-1.html 


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