2021年09月17日14時40分掲載  無料記事
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反戦・平和

混迷を深めるアフガニスタン 市民団体が声明を発表

武器取引反対ネットワーク(NAJAT)は9月上旬、アフガニスタン情勢に関する声明〈武力で「テロ」はなくせない〜アフガニスタン20年戦争の教訓〉を発表した。 
 
以下、杉原こうじのブログから転載。https://kosugihara.exblog.jp/241190042/ 
 
まもなく、9.11米同時多発「テロ」から20年。この20年間にアメリカが世界各地で行った「対テロ戦争」の影響で命を奪われた人は、推計で最大約92万9000人に上ります。アメリカの戦費は、今後の帰還兵対策を含めると、約8兆ドル(約881兆円)にも膨れ上がっています。 
 
これだけの予算を米国や世界の公衆衛生、脱貧困、環境保護、教育などに使っていれば、どれほど世界はましになっていたことでしょうか? 
 
少し遅れましたが、アメリカのアスガニスタン撤退を受けて、NAJATで声明を作りましたので、ぜひご一読ください。 
 
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【声明】武力で「テロ」はなくせない〜アフガニスタン20年戦争の教訓 
 
 アメリカは20年のアフガニスタン戦争から何も学ばなかったのだろうか。 
 
 8月30日、アフガニスタン占領軍最後の部隊がカーブル空港を後にした。そもそも、米軍によるアフガニスタン戦争自体が深刻な誤りであり、撤退はもっと早期になされるべきだった。 
 
 今回、米軍最後の汚点は、カーブル市内で「テロリスト」のクルマを狙ったとされるドローンからの攻撃だ。子ども6人を含む一般市民の家族9人を死傷させたとされる。完全撤退前日の8月29日のことである。 
 
 ブッシュ(息子)大統領が2001年に始めた「テロとの戦い」は、最初から間違っていた。巨大な武力で「テロ」をなくすことはできない。世界には不正・腐敗が充満し、貧困、差別が人々の自尊心を奪い、生活を破壊する。これに抗議する人々を権力者らが逮捕・拷問・投獄し、殺傷する。こうした事態が続く限り「テロ」はなくならない。 
 
 「テロ」を根絶するためには、このような社会的な病を根気強く治療していくほかない。当面の「テロ」への対症療法として、警察的な手法があり得るとしても、大規模な武力行使は、逆効果でしかない。理不尽な爆撃などで、家族や友人、隣人たちを殺された人々は、時として「復讐の鬼」となる。この中から、時として、新たな「テロリスト」が生まれる。 
 
 アメリカは、この「テロとの戦い」の緒戦で、アフガニスタンに地中貫通弾「バンカーバスター」や核兵器に次ぐ殺傷力を持つとされる「デイジーカッター」を含む巨大な爆弾の雨を降らせた。20年間に戦費2兆2600億ドル(約247兆円)を使い、約2500人の将兵が死亡、数万人が負傷した。アフガニスタン戦争で殺された人々は、ある推定(米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所)で計24万3千人、うち非武装の一般市民は7万1千人という(戦場となったパキスタンの一部を含む)。実数はもっと多い可能性がある。しかも、アメリカをはじめとする軍産複合体が、この地域に膨大な武器を輸出して利益を上げ、それが人々の犠牲をさらに拡大させた。 
 
 それでも、アメリカは抵抗を制圧できず、上から押し付けた「議会民主制」は定着せず、長年育成したはずの「アフガニスタン政府軍」は、バイデン大統領のアフガン撤退計画発表後ほどなく「蒸発」してしまった。ブッシュが始めた「テロとの戦い」は失敗したのだ。そして、洋上給油作戦を通じてそれに加担した日本の責任も改めて明らかになった。 
 
 8月29日のIS関連組織の戦闘員を狙ったとされる米軍の無人機攻撃で、新たな市民の犠牲者が出た。アメリカはアフガニスタンからは撤退したが、2018年から2020年までの3年間に世界の4割超にあたる85カ国・地域で「対テロ戦争」を展開したとされる(米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所)。私たちは、あらためて強調したい。「武力で『テロ』はなくならない。武力は『テロ』を増殖させる」「大国の武器ビジネスにつながる『国家テロ』をやめよ」。 
 
2021年9月6日 
 
 武器取引反対ネットワーク(NAJAT) 
 
 <連絡先> 
 メール anti.arms.export@gmail.com 
 TEL 090-6185-4407(杉原) 
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