2021年09月26日07時04分掲載  無料記事
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難民

入管庁はビデオの全面開示を 霞が関で200人がサイレントデモ

 今年3月に名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件について、収容時の監視カメラ映像の全面開示などを求める取り組みが25日に全国で一斉に行われた。東京霞が関で行われたデモには約200人が参加。参加者は「真相究明と再発防止を」「入管、政府は命をないがしろにするな」など、思い思いの言葉が記されたプラカードを掲げながら、緊急事態宣言下ということもあり、無言で行進をした。 
 
 デモの前には、主催者側からウィシュマさんの妹で二女のワヨミさんが書いたメッセージが読み上げられ、「入管が責任をとり、この事件のビデオがすべて開示されるまで、どうか私たちに心を寄せて下さい」と、事件の真相解明と今後の支援が求められた。ワヨミさんは、入管側の対応が原因で体調を崩し、23日に自国であるスリランカに帰国している。本人が今回のデモで発言することは叶わなかったものの、帰国の際には「決して諦めたわけではない」と語っており、三女のポールニマさんも、同日名古屋で行われた取り組みに参加し、日本で真相の究明を求め続けている。 
 
 ウィシュマさん遺族の代理人弁護士である指宿昭一弁護士は、デモ終了後、法務大臣がワヨミさんの帰国に関して、「個別事案については答えられない」と述べたことについて触れ、「法務大臣にとって、ウィシュマさんの死亡は個別事案に過ぎず、回答する必要のない事件になってしまったのか。そんなことは到底許されるものではない」と強い口調でその姿勢を問い質した。加えて、入管行政の在り方について「一度解体して出直すくらいのことをしなければ変わらない」と、声を上げて入管の体制を変えていく必要性を訴えた。 
 
 今回の取り組みは、北は札幌から南は高知まで、幅広い地域で一斉に開催され、デモやスタンディングアクションなど、各々の方法でウィシュマさん死亡事件の真相究明と外国人労働者の権利向上などが訴え掛けられた。取り組みを呼び掛けた学生・市民団体「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」は、ビデオ映像の全面的な開示と事件の再発防止を求めてオンラインなどで署名を集めており、25日時点で8万1000筆以上の署名が寄せられているという。10月1日には、署名の第二次提出を予定しており、それまでに10万筆の署名を集めることを目標に掲げている。 
 
 入管庁が8月に公表した調査報告書については、支援者などから「重要な事実が欠けている」との指摘がされており、ウィシュマさんご遺族にのみ開示されたビデオ映像についても、13日分の映像が2時間に編集されるなど、すべての情報が開示されているとはとても言い難い状況にある。このような入管の姿勢に東京のデモ参加者からは「都合が悪いことがあるからだ」という声も上がった。 
 
 次期通常国会で、入管法の政府改正案の提出が噂される中、ウィシュマさん死亡事件の真相究明は今後どのようになされるのか。この問題をうやむやにし、政府が今年5月に廃案となった入管法改正案と同様の法案の成立を目指そうとするのであれば、これに市民が納得するとはとても思えない。世界的にも、人権意識の重要性が叫ばれる中、入管庁には改めて組織を体質から抜本的に改革することが求められている。 


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