2021年12月26日15時39分掲載  無料記事
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国際

労働のUber化(Ubérisation)と闘うレイラ・シャイビ(Leïla Chaibi)欧州議会議員

  今月9日、欧州委員会でIT企業のプラットフォームを介して単発で仕事を請け負う労働者たち=いわゆる「ギグワーカー」を一定の条件があれば雇用された労働者と見なす法案が作られました。施行までは欧州議会加盟諸国と欧州議会の議論をまだ経る必要があるとのことですが、労働者の生活条件の救済にはプラスに働く画期的な制度となりそうです。服装などを統制したり、労働時間を統制したり、報酬の水準をIT企業側が定めたりしているなど、5つの条件のうち2つの条件を同時に満たせば雇用関係があると見なされ、最低賃金や社会保障などの対象となります。欧州で400万人が雇用者と見なされるとの推定があります。 
 
  この法案の作成にはもちろん多くの議員が関わっていますが、その中の一人がレイラ・シャイビ欧州議会議員です。彼女は過去2年に渡って、この論題を欧州議会で取り上げてきました。先日、私はシャイビ議員が誇らしげにできたてほやほやの法案を見せつつ、その内容を話す場を彼女の発信する動画で見ました。 
 
  以下はリベラシオン紙に掲載されたシャイビ議員へのインタビュー記事の内容です。偽りの「独立業者」をなくすために取り組んできたことが記されています。労働法を守らないITプラットフォーマー企業は去れ、と言っているのです。このインタビューは仏文ですが、興味深いのはブリュッセルの欧州連合本部にやってきたプラットフォーマー企業が雇うロビーストたちに対して、今年10月にカウンターの「人民」のロビー活動を展開し、欧州各地18カ国から100人の労働者を呼び集めて欧州委員会で労働状況を証言させたというあたりです。かなりの真剣な闘争だったことがうかがえます。 
https://leilachaibi.fr/travailleur-des-plateformes-entretien-pour-liberation/ 
  シャイビ氏については欧州議会議員になる前から、「立ち上がる夜」で住宅問題を議論していた彼女を私は知っています。SDF(定住所のない人)を救済するために学生時代から彼女は取り組んできましたが、企業の空きビルを占拠する、という過激な行動を行っていた時期もありました。来年のフランス大統領選を考えると、彼女が属する「服従しないフランス」のメランション候補が決戦投票に勝ち進める可能性はほとんどない苦境にありますが、そんな中でもコツコツと地道に仕事を進めているのを見て、私は嬉しく思いました。この法案が与える効果は欧州を越え、日本を含めたアジアにも及ぶと思います。さらにはこうした配達業だけでなく、労働法を回避する今日の偽装請負の問題にもメスを入れるきっかけになるかもしれません。彼女にとっても、「服従しないフランス」にとっても過去で最も大きな政治的成果だと言って過言ではないと私が考えるゆえんです。 
 
 
■パリ  フードデリバリーのプラットフォーマー会社前で抗議をする黒人たちと、新人のレイラ・シャイビ欧州議会議員 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202006100217493 
「映像に出てくる黒人労働者、イブラヒム・キテさんはフランスの理想を信じて、自分たちを正規に雇ってほしいと訴えています。みんな雨の日も雪の日も、真夏の猛暑の日も毎日、食品を配ってきたのだから、と。彼らは正当な報酬を与えてられていないばかりか、話の中では時給5ユーロと語られています。これはフランスの最低賃金よりもかなり低い額です。その上、国家から助成金を受けることもできません。また、彼らは市民が外出禁止から解除されたのちは、使い捨てるように労働から排除されようとしていると訴えています。」 
 
■レイラの4度目の挑戦〜欧州議会議員に当選〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201905281430292 
「チュニジア人の父を持つシャイビ氏は過去3回、議員に立候補しました。国会議員選挙、地方議員選挙、国会議員選挙と3回選挙に破れてきて、今回は4度目の挑戦。ついに初当選を飾りました。途中、失意から政治から遠ざかっていた時期もありました。欧州議会議員の選挙は比例代表制なので、政党グループの得票数によって議席が配分されますが、シャイビ氏は服従しないフランスのグループの選挙リストの3番手になっていましたので、当選したのです。先述の通り、服従しないフランスは6人分の議席を得ました。服従しないフランスは住宅問題も掲げていますが、自由貿易協定の問題点も指摘していて、グローバリズムの見直しを訴えている政党でもあります」 


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