2022年01月08日15時14分掲載  無料記事
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国際

昨年暮れに米失業率は3.9%まで減少したものの、12月に鈍化 オミクロン株の行方次第で数か月、回復にダメージの可能性も

  コロナ禍で打撃を受けたアメリカの失業率は昨年末に3.9%と、ついに4%を切り、かなり低い数字になりました。これはバイデン政権の手柄であるはずですが、その一方で12月に増加した職(job)の数=すなわち新たに仕事についた人−(マイナス)仕事を離れた人の数の差が、19万9千人に留まったことが懸念を呼んでいます。11月の29万4千人より減少し、1年で最少となりました。これは米労働省の統計を使ったニューヨークタイムズの記事です。 
https://www.nytimes.com/2022/01/07/business/economy/jobs-report-december-2021.html 
  トランプ大統領だった2020年2月〜コロナ問題が大きく浮上する前の景気が良かった時の職数(働く人の数)と比べると、未だ360万の職が埋まっていない状況です。単純に言えば、360万人の求人が潜在的にあるということですが、それなのに3・9%の失業者が存在する、ということです。 
 
 マクロ経済学では「物価と失業率はトレードオフの関係がある」とされ、物価を一定水準にとどめるためには、一定数の失業者の存在はやむをえない、と言われてきました。アメリカの場合、失業率3.9%はその閾に近づいているのではないかと思いますが、それでもなお、360万人の差が未だ存在するのです。 
 
  筆者は別の記事で読みましたが、労働者の中は「雇用条件が改善されないなら前の職場には戻りたくない」という人が増えているのだと言います。そのため、賃金その他の雇用条件の改善が経営者に迫られているわけです。この経費増加分がモノやサービスの値段に加算されると、さらに物価が上昇するリスクがあります。すでにエネルギーの値段の高騰がけん引して、物価が上昇しています。ニューヨークタイムズの数字では昨年、すでに米国の賃金は4.7%も上昇しています。これが物価上昇と関係しているのは明らかです。 
 
  そこにさらに新型コロナのオミクロン株の流行で、企業や施設などの稼働状況の悪化が追い打ちをかける可能性が高まってきました。オミクロン株で、家族が入院したり、学校や職場が閉鎖されたりすると、またまた逆戻りになりかねません。気長なコロナとの闘いが求められていますが、コロナ禍だけでなく、仕事の待遇、雇用条件という長期スパンで改善が求められている問題があり、こうした問題は正しく対処すればすぐにも解決できることでもあります。 
 
 
※米労働省統計 (昨年12月の統計結果) 
https://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm 
THE EMPLOYMENT SITUATION -- DECEMBER 2021 
 
Total nonfarm payroll employment rose by 199,000 in December, and the unemployment rate 
declined to 3.9 percent, the U.S. Bureau of Labor Statistics reported today. Employment 
continued to trend up in leisure and hospitality, in professional and business services, 
in manufacturing, in construction, and in transportation and warehousing. 
 
※米22年に3回利上げへ FRB、緩和縮小終了の前倒し決定(日経 12月16日) 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN140100U1A211C2000000/ 
<OMCは今回、インフレは「一時的」との表現を声明から削除した。11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が6.8%と約39年ぶりの高水準に達し、人手不足から失業率は4.2%まで下がった。インフレ対応が後手に回るとの批判が出ていた。> 


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