2022年02月04日08時57分掲載  無料記事
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難民

どうなる入管法改悪法案!? 指宿昭一弁護士に聞いてみた

 昨年3月6日にスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で亡くなってから、あと一月ほどで一年が経過する。この一年の間にウィシュマさん事件の真相を究明するべく、多くの市民が声を上げ、入管行政の在り方に疑問を投げ掛けてきた。昨年5月に入管法改正案が事実上の廃案に追い込まれた背景には、こうした市民の声があったし、多くのメディアが取り上げたことで、入管行政の闇が広く知られるきっかけにもなっている。ウィシュマさんの遺族代理人弁護士として入管問題の改善に取り組む指宿昭一弁護士に、入管行政の問題点と今後の取り組みなどについて尋ねた。 
 
 
――入管法改正案については、今夏の参院選への影響を懸念する政府与党が、通常国会への提出を見送る公算が高いとの報道がされていますが、このような政府の対応についてどう思われますか。 
 
指宿氏: 
入管法については、昨年末に入管からのリークに基づいたと思われる内容の記事が報道され、「送還忌避者は犯罪者が多い」と暗に示すようなプレスリリース(※)も出されています。このような報道発表を政府が行うこと自体が不見識だと思っていますが、これらのことからも政府は何が何でも入管法を国会に出そうとしていたのではないかと感じています。最終的には、政府与党が法案を国会に出すか否かを判断するわけですが、その判断の背景には昨年夏に入管法改悪法案を廃案にしたという事実と、入管庁の責任を追及するウィシュマさんご家族・市民の声があるはずです。 
※ 令和3年12月21日報道発表資料「現行入管法上の問題点:https://www.moj.go.jp/isa/content/001361884.pdf 
――現在開会中の通常国会で入管法改正案の提出が見送られた場合、参院選後の臨時国会で法案が提出される可能性もあるかと思いますが、これについてはいかがでしょうか。 
 
指宿氏: 
実は、法務省幹部は今通常国会での入管法改悪法案の提出を諦めておらず、4月に国会に提出するのではないかという話もあります。ただ、4月に出して国会で通るわけがないので、その場合は継続審議を狙っているということになるでしょう。法案自体を出しておかないと、政府与党から今後も「法案を出すのは止めておけ」と言われて、永遠に出せなくなる可能性があると法務省は考えているのではないでしょうか。通常国会で出さない場合は、臨時国会で法案を出そうとするのでしょうが、それが絶対に可能な状況かというとそういうわけでもない。市民の声が高まれば、臨時国会でも法案を出せなくなるでしょう。 
 
――法務省は入管法の改正にこだわっているということでしょうか。 
 
指宿氏: 
はい。そもそも、入管法の改正は「長期収容を解消するため」という触れ込みで進められようとしていますが、コロナ禍の現状下で入管施設内での感染拡大を防ぐために被収容者の数は大幅に減らされています。一時期は1,000人を超える被収容者が長期収容の状態にありましたが、これが一旦解消されて、そもそも法案を出す意味がなくなっている。それでも法案を出すのであれば、それはもう法務省の意地でしかない。この意地を通すためか、コロナの感染拡大が落ち着いていたタイミングで、法務省が再び「収容を厳格化しろ」という通達を出しており、これにより実際に再収容が進んでいるようです。法務省は、マッチポンプのように自ら問題をもう一度作り出して法案を通そうとするという、不思議なことをしています。 
 
――入管施設への収容と被収容者の強制送還が繰り返される現状を変えるためにはどのような取り組みが必要でしょうか。 
 
指宿氏: 
入管が言うところの送還忌避者とは、要は自国に帰るに帰れない事情のある人たちのことを指しているのですが、仮放免者と被収容者を併せて4,000から5,000人ほどの人たちがいると言われています。このような人たちは、自国に帰ると殺される、日本に家族がいる、長期に日本で生活することで生活基盤が完全に日本に移っている、というような止むに止まれぬ事情を抱えた人たちばかりです。入管はこのような人たちを長期収容で痛めつけ、それでも帰らない人たちに刑罰を科して帰国させようとしています。難民申請者であっても、3回目以降の申請者について、入管法を変えることで帰国できるようにしようとしています。しかし、これは間違っている。帰るに帰れない人たちには、在留特別許可を出すべきなのです。さらに言えば、在留特別許可だけでなく、難民認定についても国際基準に沿った運用をするべきです。今の日本の難民認定率は、カナダの100分の1ほどですが、これを国際基準に沿った形にすれば、今の50倍から100倍の人たちが難民として認められる可能性がある。問題の解決策が明らかであるのに、入管はこのような方向に持っていきたくないため、入管法の改悪にこだわっていると言えるでしょう。 
 
――昨年3月に名古屋入管で亡くなられたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの事件の真相を究明される活動に取り組まれる中で、新たな学生・市民の団体を立ち上げられましたね。 
 
指宿氏: 
はい。昨年12月にこれまでウィシュマさんの問題を訴えかけてきた団体を発展させて、「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合」(入管闘争市民連合)という団体を作りました。この団体は、入管の問題に関して様々な団体がバラバラに取り組む中で、問題に立ち向かう市民の側も組織とネットワークを作って、強く声を発することができるようにするべき、という学生と市民の声に基づいて作られたものです。学生からの要望もあり、私が代表を務めています。 
 
――新しい団体では今後どのような取り組みを進めていかれるのでしょうか。 
 
指宿氏: 
入管闘争市民連合は、ウィシュマさんの問題だけでなく、入管の送還一本槍の方針を変えさせることを目標としています。具体的には、.Εシュマさん死亡事件の真相を究明し遺族にビデオを提供すること、◆愾還一本槍の方針』を追及して国民的な議論に繋げること、F管の医療体制を抜本的に改革すること、といった3つの事柄を求める運動方針を掲げて活動しています。入管問題は、仮放免者や被収容者のような当事者の問題である一方で、日本社会全体の問題でもあります。そのため、日本の市民の責任において変えなければいけない、と強く意識して活動に取り組んでいます。 
 
――このような学生・市民の団体とは別に弁護士の団体も立ち上げられましたね。 
 
指宿氏: 
はい。法律の専門家である弁護士の立場からこの問題に取り組むためのネットワークがあった方がいい、という意見が出る中で、昨年12月に「入管を変える!弁護士ネットワーク」を設立しました。私は共同代表を務めていますが、入管問題などに取り組む弁護士を中心に、市民運動やメディアと積極的に連携しながら問題の解決を図っていきたいと思っています。 
 
――あと一月ほどでウィシュマさんが亡くなられて1年が経過します。 
 
指宿氏: 
はい。ウィシュマさんが亡くなった3月6日の日には愛知県内で一周忌を行う予定でいます。また、死亡が確認された午後3時25分には、入管施設への被収容者を含めて広く一般に1分間の黙とうをするよう、呼び掛けたいと思っています。 
 
――最後に、入管問題の改善に取り組むにあたっての今後の意気込みをお聞かせください。 
 
指宿氏: 
今、ウィシュマさんの事件を通じて、入管の深い闇が多くの市民に知られるようになってきています。これが示す意味は非常に大きく、以前であれば入管が法案を作って政府が国会に提出したらほぼ確実に通る状況が繰り返されてきましたが、それができない状態が作られつつあります。ただ、法務省側も何が何でもこの法案を通そうとしてくるので、我々も気を抜くことはできません。法案を阻止し続ければ、入管も方向性を変えざるをえなくなるため、法案を“潰すだけでは何も変わらない”のではなく、“潰すことで道が開ける”と思っています。そういう意味でも、入管法案を潰すということを当面の目標としてしっかりと掲げて、活動をしていきたいと思っています。 
 
――ありがとうございました。 
 
 
(入管闘争市民連合ホームページ)https://www.ntsiminrengo.org 
(入管闘争市民連合Twitterアカウント)https://twitter.com/nyukan_alliance?s=11 


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