2022年02月13日20時32分掲載  無料記事
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農と食

【ご案内】国際有機農業映画祭2021を配信で開催

 有機農業や環境を主なテーマに内外の秀作を上映してきた国際有機農業映画祭は、今年で15回目を迎えます。このコロナウイルス禍の終息が見えない中、実会場での開催を断念し、昨年に引き続きオンライン配信による開催となりました。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 今回は、《つなぐ・つなげる》をテーマに、日本とフランスで制作された6作品を配信します。日本初公開作品は2作品です。配信作品の1本は、日本の有機農業運動の黎明期に、神奈川県藤沢市の団地の主婦たちと、手探りで「提携」を始めた、新潟県津南町の開拓農家の青年たちの活動を描いた『津南高原生産組合と辻堂団地食品の会・記録』(1972年/57分)です。この津南高原生産組合のリーダーであった鶴巻義夫さんは昨年2月にお亡くなりになりました。鶴巻さん追悼の意味も込めてこの作品を配信します。それから50年がたち、やはり黎明期の有機農業運動を牽引した大平博四さん(東京都世田谷区)の残した大平農園が、後継者難からその存続が危ぶまれています。大平農園に通う監督が撮った『大平農園405年目つなぐ』(2021年/日本/77分、企画・撮影・編集:森信潤子)は、有機農業とて農業者の高齢化と後継者の問題に無関係ではありえない現実を突きつけています。 
 
 今回、日本初公開となる『グリホサートと私』(2021年/フランス/52分、イザベル・ヴェロン監督)を配信します。この作品はフランス中部の穀倉地帯で母となった女性ジャーナリストが、小麦の播種前に散布される除草剤グリホサートについて、使っている農家、やめた農家、有機農業を目指す跡継ぎ世代などに取材し、その本音を描いた作品です。日本は年間1万トン弱の小麦をフランスから輸入していますが、その一部からは残留グリホサートが見つかっています。作品では、いくら国内での規制を強化しても、輸入食品に含まれているグリホサートの残留基準値が緩すぎるという、日本でも共通する問題にも踏み込んでいます。 
 
 ほかには、高知県いの町の楮栽培を追った『明日をへぐる』(2021年/日本/73分、今井友樹監督)、持続可能な森林経営を目指す自伐型林業の可能性を追った『壊れゆく森から、持続する森へ』(2020年/日本/39分、香月正夫監督)、日本の昆虫ブームに翻弄されるインドネシア・スラウェシ島の人々を描いた初公開の『貧困と昆虫』(2021年/日本/15分、白木邦治監督)を配信します。 
 
■国際有機農業映画祭2021 概要 
 配  信:2月18日(金)10:00〜2月23日(水)23:55 
 参 加 費:2,500円(税込) 
 主  催:国際有機農業映画祭 
 チケット申込・購入期間:2月10日〜16日 
 http://yuki-eiga.shop-pro.jp/?pid=166097846 
 
■配信映作品詳細 
『津南高原生産組合と辻堂団地食品の会・記録』 
 1972年/日本/57分 
 監督:小泉修吉 
 制作:グループ現代 
 安全な食品を手に入れたい神奈川県辻堂団地の主婦た 
 ちと、戦後入植した開拓が破綻して生き残りを探る新 
 潟県津南高原の青年たちが手を結んだ。青年たちは生 
 産組合を作り、主婦たちの希望を入れて野菜を作る。 
 出稼ぎで稼いだ資金でトラックを買い、神奈川まで運 
 ぶ。農家と消費者が直に協力して進める「提携」(産 
 直・共同購入方式)の基礎を築いた津南高原生産組合 
 と辻同団地食品の会の産直の取り組みの1年を描く。 
 50年前の取り組みがまだ色あせていない。日本の有機 
 農業運動の記念碑的な作品。21年2月にお亡くなりに 
 なった、青年たちの一人である鶴巻義夫さん追悼上映。 
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『大平農園405年目つなぐ』 
 2021年/日本/77分 
 企画・撮影・編集:森信潤子 
 制作:バク 
 東京都世田谷区の住宅地の一角に大きな欅の木が茂る 
 大平農園の母屋がある。その落葉は、昔ながらの方法 
 で発酵させて堆肥となる。落葉堆肥で作った苗は、や 
 はり住宅地の一角の畑に植えられる。大平博四さん亡 
 き後、畑はボランティアにより維持されてきた。園主 
 の高齢化で、砂漠に浮かぶオアシスのような大平農園 
 の畑はどうなるのか? 前作『大平農園401年目の四 
 季』の危機的な状況はより深刻になる。しかし、春の 
 種まき、定植、収穫、堆肥作りと農作業は淡々と続く。 
 都市農業の可能性と、日本の農業が抱える後継者問題 
 を描く。 
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『グリホサートと私』 初公開作品 
 2021年/フランス/52分 
 監督:イザベル・ヴェロン 
 パリ南部の穀倉地帯では、小麦の播種前に雑草を枯ら 
 すために除草剤グリホサートが散布されている。子供 
 が生まれたヴェロンさんは、なぜグリホサートを使う 
 のか、使わない農法はないか、周囲の農家の本音を取 
 材する。一部の農家は使用しないように動き始め、有 
 機農業を選択する若者も出てきている。規制が強化さ 
 れ、使用禁止の可能性も出てきている欧州。ドイツの 
 新しい連立政権は2023年の禁止で合意した。EUの規 
 制に先駆けて農薬規制を強めているフランスにおける、 
 グリホサートの収穫前散布の実情と農家の本音を描く。 
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『明日をへぐる』 
 2021年/日本/73分 
 監督:今井友樹 
 製作:シグロ 
 かつて山村の現金収入の一つであった楮の栽培は、高 
 齢化と和紙の衰退に伴い減少している。土佐和紙の産 
 地である高知県いの町では、地域の人たちの助力を得 
 て栽培が続いている。楮を蒸して、外皮をはぎとる作 
 業を「へぐる」という。和気あいあいとしたへぐり作 
 業の老人たちの雰囲気を醸し出す映像が表とすれば、 
 その裏には高齢化による先行きの危うさがにじみ出て 
 くる。「藤代さんがおらんなったらどうするが? 後、 
 誰がやる」と問われ、94歳の寅井さんは「いや、ま 
 だおる私」と返す。楮と山里の人々の暮らしを描く。 
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『壊れゆく森から、持続する森へ』 
 2020/日本/39分 
 監督:香月正夫 
 制作:アジア太平洋資料センター 
 森林が7割を占める日本。戦後復興を支えてきた林業 
 も、高度成長期を過ぎ、「儲からない産業」の代名詞 
 に。一方、戦後に植林された人工林も50年を超え、伐 
 採時期となっている。政府の進める「大規模・集約」 
 の伐採で、無残な姿に変わった山も多い。災害時の土 
 砂崩れの防止、気候変動対策の役目も弱まる懸念材料 
 になっている。そうした皆伐型林業ではなく、持続的 
 な山林経営と山の保全を目的とする自伐型林業への動 
 きが各地で出てきている。鳥取県智頭町や自伐型林業 
 を推進する全国ネットワークに取材し様々な持続可能 
 な林業のあり方を探る。 
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『貧困と昆虫』 初公開作品 
 2021年/日本/15分 
 監督:白木邦治 
 希少動物の宝庫・インドネシアのスラウェシ島には 
 「蝶の谷」と呼ばれる様々な蝶がみだれ飛ぶ楽園があ 
 る。しかし観光化が進むにつれ、世界的に珍しい蝶た 
 ちが土産物として乱獲され、激減しているという。日 
 本にもこの島から大型クワガタムシが輸出されてきた。 
 一時の昆虫ブームが山間部の寒村の暮らしを一変させ 
 ていく。無定見な採取は環境悪化を招き、その一方で、 
 現金収入に乏しい地域の人々が、生活のために昆虫の 
 捕獲をせざるを得ない現実もある。先進国の流行すた 
 りに翻弄される人々を描く。 
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