2022年02月14日21時47分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】フランスが原発の増設計画を発表 その背景には何があるのか 山崎久隆

 AFP通信は2月11日に『仏、原子炉最大14基新設へ「原子力産業のルネサンス」』と題する記事を配信するなど、世界で大きなニュースになっているが、その背景は何か。 
 
 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月10日、フランス東部のベルフォールにある原子力発電用タービン工場で演説し、「6基の原子力発電所を建設し、さらに8基を建設するために準備を進めるつもりだ」と、原発増設に踏み切る計画出あることを明らかにした。2050年ごろまでをめどに、最大14基の原発を建設する。 
 
 福島第一原発事故以前は75%だった原発依存率を、事故後のエネルギー政策の見直しで依存度を50%に引き下げるとしてきたオランド政権の政策を引き継いできたが、これを転換するとの姿勢を示したことで注目されている。 
 
 しかし、その背景にはフランス原子力産業の急速な衰退と世界シェアを失いつつある現実に加え、EU全体のエネルギー政策とフランスの燃料税増税や気候変動対策の動向が大きく関係している。背景にはマクロン政権の支持率低迷と迫る大統領選挙がある。 
 
 折しも「ウクライナ危機」の勃発で、ロシアから輸入している天然ガスを止める、止め内の議論が巻き起こり、状況次第では真冬にロシアからの天然ガスが停止される恐れも出てきたことで、原発の優位性をアピールする好機になっていること、加えてフランス大統領選挙が4月10日に始まることもあり、原子力の拡大をエネルギー政策の一つの柱としてマクロン政権が打ち出した。 
 尤も、ウクライナ危機に原発増設が間に合うわけでもないし、再生可能エネルギーへの投資を進める方針にも変わりはない。 
 
■EUの方針に影響力を行使する 
 
 EUの欧州委員会は原子力発電を二酸化炭素を排出しない「グリーンエネルギー」と認める方針を2月2日に明らかにしたことで、EU内の議論が二分される事態になった。 
 特に脱原発政策を積極的に進めるドイツと、既に原発を禁止しているオーストリアなど5カ国が反対し、論争になっている。 
 
 EUの方針は昨年来議論が続くが、積極的に進めているのはフランス。フランスの原子力産業が直面している深刻な危機を打開するためには、原子力への巨額投資が必須だが、現在原発の増設計画を打ち出しているのは、中国、ロシア、インドぐらい。その他にも新規立地を目指す国はあるが、具体性が低かったり、建設してもせいぜい2・3基止まりと、あまり商売にならない。 
 さらに米国がSMRに積極投資するなど、従来型の大型発電所の計画は世界中から聞こえてこない。 
 その際大の原因は価格の高騰だ。 
 
 フランスが開発し、国際輸出を目指しているEPR及びEPR2は、一基あたり1兆円もかかる。160万キロワット級と、規模が大きいこともコストが有利になることより小回りがきかない欠点となる。 
 現在まで、フランスに1機、フィンランドに1機、中国に2機が運転中又は建設中。イギリスには3基が計画中。しかし中国の2機以外はいずれも工期の大幅な遅れと価格の高騰に見舞われ、悪しき前例として導入を目指す国は、ほとんど無いのが現状だ。 
 
 このままではフランスの原子力産業は破綻する。 
 再処理工場が今やフランスの使用済燃料の再処理しか行わず、最大顧客だったドイツが原発からの撤退、日本が六ヶ所再処理工場の建設に伴う委託終了で、海外顧客がなくなっている。MOX燃料を製造する工場も稼働率が大きく落ち、日本向けMOX燃料の生産も予定を大きく下回り、採算性はほとんど見込めないと思われる。 
 
 これを打開するには、原発の増設を推進する必要があるが、現状は運転年数が経過した原発のリプレースが最も有望である。 
 フランスの原発も経年化が進み、原発が運転年数40年を超え始めた。 
 
 これに対して、フランス原子力安全局は21年2月25日に耐用年数の規定を、従来の40年から50年に延長することを認めた。国内に計56基ある原発のうち、主に1980年代に建設された32基について、耐用年数を当初の40年から50年に延長し、10年長く稼働させることを認めるという。 
 
 しかし今後を考えると、原発の依存度を下げるか、新規建設を認めるかの二択になる。これまえでは新規建設を止め、依存度を低下させる政策を採っていたが、ここに来てリプレースを方針とすると明らかにした。 
 
 マクロン政権の「2050年までに14基建設」の方針も、よく見ると「まず6基」としている。これは一基あたり160万キロワットとしたら、960万kWになる。つまり、50年延長運転を認めた34基の出力合計約900万kWと同じ値だ。増設ではなく現状維持をする計画だと分かる。2030年代にもう一度10年延長を認める動きが出るだろう。そうでないと計算が合わない。 
 そのうえで、60年運転後に廃炉になる原発に変わり、EPR型を6基建設するという計画と読み取れる。これを「ルネッサンス」というのだろうか。 
 
■結局はフランスも依存度が低減する計画だ 
 
 現在フランスの原子力発電シェアは約4000万kWで全体の70%。2050年代には全部が60年を超える。つまり今の原発はなくなる。 
 その置き換えで14基のEPRが建設されたとしても、合計出力は2560万kWに過ぎない。これで現在のフランスの全発電電力5710万kW(2019年)の45%相当。つまり現状の「50%までに引き下げ」の方針に変わりがない 
ことが分かる。 
 
 そのことを冷静に見極め、この計画がEUや日本の状況を大きく変えるものではないし、これをもって「原子力は復権した」(ルネッサンス)などとする主張に対して、そうではないことを明確に訴える必要があるだろ 
う。 
 特に原発推進マスコミは、これを元にキャンペーンを始める。 
 要警戒である。 
 
(たんぽぽ舎共同代表) 


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