2022年02月28日21時46分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202202282146511

欧州

ロシアによるウクライナ侵攻の影響〜チャオ!イタリア通信 サトウノリコ

 今年に入ってからコロナ関連のニュースと共にトップニュースになっていたのが、ガス料金が値上がりするというニュースでした。イタリアはロシアからガスを買っているので、ロシア軍のウクライナ侵攻はガス料金に影響を与えるということが、具体的に私たちの生活にも表れています。先日我が家に届いたガス料金は昨年と比べて2倍になっていました。この問題が深刻なのはイタリアとドイツ。フランスは原子力発電所を持っているので、自国でエネルギー開発が出来るためです。かといって、イタリアが原子力発電所を造るという政策に転換するとは思えませんが。イタリアの問題は、ガスや電気など公共エネルギーを政府がコントロールしていないところともいえます。 
 
 その後、二月からコロナの状況が落ち着き始め、ロシアがウクライナの一部に侵攻するというニュースがトップになり始めました。印象的だったのは、ウクライナ軍の兵士が女性たちに向けて、ロシア軍が侵攻して来た時に自己防衛をするためのセミナーを行っている様子をニュースで見たことでした。映像の中で、女性たちは防御方法を教える兵士に質問したり、ビデオを撮ったり、メモを取ったりと熱心に参加していました。現実問題として、危機感を感じている様子が伝わってきました。また、ウクライナ政府はロシア軍が攻め入って来た時にどういう対処をしたらいいのか、逃げる時に所持する非常袋キットについての情報なども用意されているとのこと。携帯のGPS機能を使って、戦争が始まったら、どこに逃げればいいのかも検索できるようになっているというのも、ウクライナ国民がそういう危機感のもとで生活していたのだと改めて感じました。 
 
 恥ずかしながら、8年前にすでにロシア軍はウクライナの一部に侵攻していたということを知らなかったのですが、その経験を踏まえてウクライナ政府は様々な準備をしていたのだとわかりました。ニュース番組では、8年前にロシア軍が侵攻して政略したウクライナの地域から首都のキエフに逃げてきた女性のことも報道していました。その女性は、自分は経験があるから今すぐにでも逃げる準備はできていると言って、非常袋キット(リュックになっているもの)を見せてくれました。 
 
 2月27日のニュースではドイツの首都ベルリンのロシア侵攻への反対デモが報道されました。昨日、フィレンツェでもデモを見ましたが、ベルリンの規模はフィレンツェとは比べものにならないほど大きく、プーチンの写真にヒトラーのひげを描いたプラカードも見え、ドイツ国民が自分たちの歴史に照らし合わせて、ロシア軍のウクライナ侵攻を見ているということが理解できました。 
 
 他のテレビ番組では、ジャーナリストがロシア軍が本当にウクライナを攻めるとは予測できなかったことだとも発言していました。日本もそうですが、ヨーロッパも第二次世界大戦が終わり、70年以上戦争という事態を体験していません。それは良いことでもあるのですが、同時に世界のどこかで今だに起こっている戦争を遠い世界のこと、自分たちとは関係ないことという鈍い感覚を生み出してしまっているだろうかと考えさせられました。そして、ロシアがウクライナ侵攻の後、もし今後NATOのメンバーでもあるポーランドやルーマニアに侵攻してくるとしたら、ヨーロッパが戦場になる可能性も出てくるという危機感、再びヨーロッパが引き裂かれるという危機感を誰でも持ったのではないでしょうか。 
 
 2月24日にロシア軍がウクライナを攻めた時、朝からそのニュースが流れていましたが、すごいショックだというのは、いつも仕事をしながら聞いているラジオ番組からも伝わってきました。というのも、その番組のDJが身近なところで戦争が始まっている、でも自分たちはいつも通りラジオ番組を続けているということへの矛盾感を率直に語っていたからです。そして、ある視聴者からのメッセージで、公園を散歩していたら、ベンチで女性が携帯で話しながら泣いていた、その女性の話を聞くとウクライナにいる家族か親戚と話していたという、その視聴者は初めて知らない人を抱きしめたというものでした。イタリア人の優しさを感じさせる出来事だなと思いました。 
 
 私としては、ウクライナという国を初めて認識した出来事ですが、大統領にしてもキエフ市長にしても、自分たちはロシアの征服には屈しない、独立した国でありたいという思いが強く、ウクライナ国民として誇り高いことが発言から伝わってきます。全世界がそれに連帯することで、ロシアを孤立させることが今最善のことだと思います。そして、ロシア国民の中にある戦争反対を唱える人たちとつながることも大切なこと。一日でも早く、この戦争が終わってほしいです。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。