2022年03月22日11時57分掲載  無料記事
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反戦・平和

紛争当事国ウクライナへの防弾チョッキ供与の撤回を求めます 市民団体が声明を発表

日本政府が自衛隊の防弾チョッキをウクライナに提供したことを受け、武器輸出問題に取り組む市民団体「武器取引反対ネットワーク(NAJAT)」は17日、防弾チョッキ供与の撤回を求める声明「紛争当事国ウクライナへの防弾チョッキ供与の撤回を求めます」を発表した。 
 
以下、声明全文。(杉原こうじ=NAJAT代表のブログより) 
https://kosugihara.exblog.jp/241394607/ 
 
【声明】紛争当事国ウクライナへの防弾チョッキ供与の撤回を求めます 
 
 2月24日、ロシア・プーチン政権は隣国ウクライナへの軍事侵略を開始した。既に20日間が経過し、国際人道法に違反する残虐な戦争犯罪が繰り返されている。どのような背景や理由があろうと、プーチン政権によるウクライナ侵略は許されない。 
 
 こうした中、岸田政権は、3月4日午後に国家安全保障会議(NSC)を開き、自衛隊の防弾チョッキなどを紛争当事国ウクライナに供与することを決定した。この動きが報じられたのは4日の朝であり、異常な速さだった。国会や主権者は完全に無視された。 
 
 防弾チョッキは「武器」に該当する。読売新聞ですら、「武力攻撃を受けている国への装備品の供与は異例だ」と書いた。「人道」を前面に押し立て、「戦時」の空気につけ込んで、紛争当事国への武器輸出に強引に道を開く"火事場泥棒"の手口に他ならない。 
 
 この決定について、防衛省関係者は「武器の供与をめぐる歴史を考えれば、日本の防衛政策の大きな転換点になる」と語ったという。4日午前に開かれた自民党の会合では、防弾チョッキなどの供与に賛成する意見が相次ぎ、「防弾チョッキ以上のものでも、ウクライナが必要とするものは支援を検討すべき」との声が出た。どさくさに紛れて、武器輸出を制限してきた歯止めを全廃しようとするものであり、まさしく”ショック・ドクトリン”そのものだ。 
 
 今回の武器供与が突破口となり、いずれは例えばウクライナがリクエストしていたという、対戦車砲や地対空ミサイル、小銃の弾薬などの殺傷武器へとエスカレートしていく恐れがある。 
 
 政府は3月8日になって、再びNSCを持ち回りで開き、特例的に「防衛装備移転三原則」の運用指針の改定を決め、防弾チョッキ等の供与を改めて確認した。その夜、武器の一部を載せた自衛隊機が愛知県小牧基地を出発した。従来の指針ではウクライナへの供与が可能か不明確だったとして、運用指針に定める「防衛装備の海外移転を認め得る案件」に「国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転」を追加した。今回に限って、非殺傷用の武器に限り認めるのだという。 
 つまり、4日のNSCでの供与の決定は運用指針違反だったと認めたに等しい。これは法治国家ではない。自らが決めたルールを破っておいて、後からルールを変更するという手法がまかり通れば、毎回同様のやり方で武器供与が可能となる。要するに何でもありの脱法行為だ。私たちは運用指針の恣意的な改定の撤回を求める。 
 
 さらに政府は、侵略を受けて交戦しているウクライナが、武器輸出できない「紛争当事国」には当たらないとする詭弁を弄している。防衛装備移転三原則が「紛争当事国」の定義を、「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国」と極めて狭く限定し、該当するのは湾岸戦争時のイラクと朝鮮戦争時の朝鮮民主主義人民共和国としているからだ。つまり、1991年の湾岸戦争以降、世界に紛争当事国は存在していないことになる。 
 ウクライナが紛争当事国だからこそ、武器である防弾チョッキを供与しようと企てたのではないか。現実離れした定義に基づく武器供与はそもそも論外だ。 
 
 私たちが驚いたのは、翌日に撤回されたとはいえ、日本共産党の政策責任者が3月4日の会見で「人道支援としてできることは全てやるべきだ。今回、私がこの場で反対と表明するようなことは考えていない」と語ったことだ。野党第一党である立憲民主党もあっさりと武器の供与を容認した。「戦時」の空気に呑まれて、原則を譲りわたしてはならない。 
 
 2014年4月1日に当時の安倍政権が閣議決定のみで撤廃した武器輸出三原則の肝は、「紛争を助長しない」という憲法9条を具現化した理念だった。紛争当事者に武器を輸出することの危うさが自覚されていた。日本は憲法9条に基づき、非軍事の民生支援に徹し、停戦に向けた仲介や難民支援などに尽力すべきだ。 
 私たちは、紛争当事国ウクライナへの武器供与をただちに中止するよう求める。加えて、インドネシアへの殺傷武器である三菱重工製護衛艦の輸出や、紛争当事国UAE(アラブ首長国連邦)への川崎重工製軍用輸送機C2の輸出も断念するよう求める。私たちはまた、紛争に巣食い、紛争を焚きつける軍産複合体を許さない。こうした時だからこそ、武器輸出三原則の復活と強化を強く要求する。 
 
2022年3月17日 
武器取引反対ネットワーク(NAJAT) 


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