2022年03月31日17時38分掲載  無料記事
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難民

ロシア=ウクライナ戦争が明らかにしたイタリアの政界〜チャオ!イタリア通信 サトウノリコ

 ロシアがウクライナに侵攻して、約一か月が経ちました。毎日、ニュース番組のトップはウクライナの状況やウクライナとロシアとの対談の様子を伝える報道です。この間、子どものクラスのお母さんから近所のピッツァ屋がウクライナへの寄付を募っていると聞いて、子どもたちと小さくなった洋服や靴、食料品を持っていきました。子どもたちの学校でも、クラスで平和について先生から話があったようで、私の息子は「ロシアと戦うためにウクライナに行く」なんてことも言ってました。学校の窓には「PACE」(平和)と書かれた旗が貼られています。 
 
 我が家もベランダに同じ旗をつけました。また、私が住む町でも戦争に反対する集まりがあったり、私が日本語を教えている生徒の学校でも戦争に反対する集まりを学校で行ったりという動きがありました。さらには、ウクライナから逃げてきた子どもたちを家で一時的に滞在させるというボランティア活動もあり、我が家もそれに登録しました。戦争が早く終わって、このボランティア活動も早くなくなることを祈っていますが。 
 
 報道番組では、イタリアのウクライナ避難民が約7万6千人(3月30日時点)に達したと報じられ、これらの避難民は主にローマ、ミラノ、ボローニャなどの都市に滞在しているとのこと。また、そのうち約40%が両親がいなく、子どもだけで避難してきているというということです。特に、父親は戦うためにウクライナに残っているということが言われています。 
 
 イタリアのラグビーチームやセリエAで有名なユベントスもチームの所有するバスで子どもたちをイタリアに避難させたりという活動をしています。この報道番組では、イタリアの小学校や中学校に通うウクライナの子どもたちの様子を伝えていました。イタリアの子、ウクライナの子がそれぞれの言葉を勉強して相互理解をする良い機会となっているようです。もちろん、クラスの担任以外に補助をする人が必要ですが、子どもの時のこうした体験は大人になってもずっと残るものだと思います。この番組で印象的だったことは、子どもたちが平和についてとても深く考えていることでした。この気持ちをずっと持ち続けて生きてほしいと思いました。 
 
 こうした子どもたちの活動の反面、対象的なのは大人の世界です。中道右派のリーダーである、ベルルスコーニ氏(フォルツァ・イタリア党)とサルヴィー二氏(同盟)がここ数年ロシアのプーチン大統領と緊密な関係を持っていたという報道があります。サルヴィーニ氏にいたっては、プーチン大統領が印刷されたTシャツを着て、2015年に欧州議会に行ったビデオ(この中で、サルヴィーニ氏はプーチン大統領に反対する欧州はバカだと言っています。)やモスクワの赤の広場で得意気にしているビデオが様々なところで取り上げられ、政治家としての(「人として」と言ってもいいと思いますが)信頼性や品格などが問われています。本人は「厚顔無恥」という言葉がピッタリだと思いますが、それについてのコメントはなく、だんまりです。2017年の政治討論番組では、プーチン大統領がシリアにいたら、ISISはすぐに降参して、家に帰っているなどとも話しており、プーチン大統領を持ち上げています。また、ロシアによるクリミア半島の占領による国際的なロシアへの経済制裁についても反対の意見を言っていました。 
 
 この背景には、お金の動きがありました。イギリスの新聞「The Telegrafh」では、2014年にロシアはクリミア半島を占領した後、国際的な経済制裁を受け、ヨーロッパ諸国における欧州懐疑主義の党に資金を秘密裏に提供したという調査内容を報じています。イタリアでは、その欧州懐疑主義の党が「同盟」だったのです。そのため、サルヴィーニ氏の発言につながったということも納得です。 
 
 サルヴィーニ氏を個人的には知りませんが、節操がないという印象を受けます。政治家としての一本筋が通った政策というものを持たず、その場で市民に受けそうなことをただ言葉にしているという印象です。こういう人物が現在イタリア議会での大勢を占める政党のリーダーということは、イタリア人も本当に目を覚まさなくてはいけないと痛感しています。 


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