2022年04月15日21時31分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202204152131375

国際

【AIニュース】ウクライナ:数々の証言が示すロシア軍の市民殺害と戦争犯罪

 国際人権団体アムネスティはウクライナにおけるロシア軍の戦争犯罪について、現地に入り調査を続けている。アムネスティ国際ニュース(AIニュース)が伝える現地の状況をお伝えする。同ニュースによると、アムネスティの危機対応調査員は、キーウ近郊の街や村に住む20人以上の住民から話を聞いた。全員が、ロシア軍による市民への脅し、暴力、殺人などを繰り返し訴えた。幾人かは、こうした行為の目撃者でもある。そのほか、アムネスティはこれまでに、ハルキウと北東部スームィ州で無差別攻撃により市民が殺害された証拠を入手し、またチェルニヒウで食べ物を求めて列に並ぶ市民が空爆を受けて死亡したことを確認した。ハルキウ、イジューム、マリウポリではロシア軍に包囲されて暮らす市民から証拠を収集している。(大野和興) 
 
 以下、アムネスティ国際ニュースが4月7日に報じたウクライナの現状を転載する。 
 
「ロシア軍が頭を撃った」 
 
ボフダニウカ村の女性(46歳)は、「ロシア軍が3月7日か8日に村にやってきて、戦車が路上に停まった」と話し始めた。夫と娘(10歳)、義理の母(81歳)と住んでいたこの女性は3月9 日夜、自宅の2階にいて、襲撃音を聞いた。下に降りると、ロシア軍兵士2人が入ってきて、夫婦と娘をボイラー室に閉じ込めた。 
 
「私たちは、ボイラー室に閉じ込められた。その後、兵士の1人が夫に『タバコはあるか』と聞いてきた。夫は『ない。2週間ほどタバコは吸っていない』と答えるやいなや腕を撃たれ、さらに、もう1人の兵士が『始末しろ』と言い、夫は頭を撃たれた。虫の息の夫に話しかけると、夫は私の膝に手を置き、握りしめた。血だらけの中、夫は息を引き取った」 
 
近隣住人は、ロシア軍が女性宅に押し入るところを目撃しており、ボイラー室の隅にあった夫の遺体も見ている。この女性と子どもはその日のうちに町を出たが、義母は、体力面で無理があると判断し、自宅に残さざるをえなかった。 
 
「父の背中には、6つの大きな穴があった」 
3月3日、カテリーナ・トカチョバさん(18歳)さんは、両親とブチャ南西部のボルゼル村の自宅にいた時、車体に「Z」と書かれた戦車数台が自宅の方向に来るのが見えた。両親は、カテリーナさんに「ここにいて」と言い残して外に出た直後、銃声が響いた。 
 
カテリーナさんが当時の様子をアムネスティに語った。「戦車が通り過ぎるとすぐ庭に出て、塀越しに外を見た。路上には、あおむけに倒れた母と、うつ伏せの父の姿があった。父の上着には穴がいくつもあるのが見えた。翌日、2人のところに行った。父の背中に6つの大きな穴が空いていた。母の胸にも小さな穴があった」。 
動画には、カテリーナさんとボランティアが、両親の名前や生年月日、死亡日を厚紙に書き、毛布をかけた遺体の前に置く様子が映っていた。3月10日、カテリーナさんはボランティアの助けを借りて村を出た。 
 
「ロシア兵は私たちに気づくと銃撃してきた」 
ロシアがホストーメリの町を占拠してから、タラス・クズマックさんは、住民が避難するシェルターに食糧や医薬品を車で届けていた。 
 
3月3日、町長のユーリイ・プリリプコさんら男性4人が車で移動していたとき、ロシア軍が占拠する共同住宅のほうから銃撃を受けた。4人が車から出ようとした時、銃弾を受けて1人が即死し、町長も銃弾を受けて負傷して路上に倒れた。クズマックさんともう1人は、掘削機の後ろに隠れたが、攻撃は何時間も続いた。 
 
クズマックさんはアムネスティにこう話す。「彼らはこちらに気づくと警告もなく撃ってきた。町長はおよそ30分後には息を引き取った。銃弾で即死した男性の頭部はなかった。大口径の銃を使ったのだろう」。別の住民2人の話では、数日後、亡くなった町長のために簡易な葬儀をした後、遺体を教会近くに埋葬した。町長は直前まで住民に食糧や医薬品などの配給に走り回っていたという。 
 
殺人と強かん 
 
アムネスティの調べで、他にも住民への銃撃が3件あった。うち1件は、夫がロシアの兵士に処刑され、生き残った妻は強かんされた。 
キーウ東部の村では、女性の夫がロシア軍兵士に射殺され、その後、女性は銃を突きつけられ、何度も強かんされた。自宅のボイラー室に隠れていた幼い息子とともに、女性は村を脱出し、ウクライナ支配下の地域に逃れた。 
 
ブチャのミレーナさん(24歳)は、同じ通りに住んでいた女性2人の遺体を近くの路上で目にした。犠牲者の1人の母親によると、娘は、侵攻するロシア軍を自宅の塀越しに見ていた時に撃たれたという。アムネスティのクライシス・エビデンス・ラボは動画を検証し、女性が眠る墓地の場所も確認した。 
 
ヴォロディミル・ザクリウパニイさんは、ロシア侵略開始から数日後、妻と共にホストーメリの町から逃げたが、息子のセルヒさん(39歳)は残ることにした。 
その後、息子は毎日、両親に電話で町の激しい戦闘の様子を伝えた。3月4日、息子からの電話が途絶え、連絡が取れなくなった。町に残っていた友人が、息子が避難していたビルの地下室をのぞいた。ザクリウパニイさんがアムネスティに話す。「友人は、隣人から『セルヒさんはロシア人に連行されていった』と告げられた。その後、同じビルのガレージの裏で、頭部を撃たれて横たわる息子の亡骸があった」 
 
ロシア制圧下での生活 
 
アムネスティが聞き取りをした人たちは、ロシアの侵攻後まもなく、電気、水、ガスが使えなくなり、食糧の入手もままならなかったという。また、「携帯電話もほぼ使えず、使えてもロシア兵に没収されたり、潰されたりした」とも語った。 
 
暴力や脅しも頻繁に発生した。ホストーメリの住民の1人は、攻撃を逃れた人たちがロシア軍の命令で外に出された直後、頭上に向けて発砲され、地面に伏せるのを見たという。また、ブチャから来た男性2人は、「自宅近くの破壊された店から食料品を運び出す際、狙撃手の発砲を何度も受けた」と話した。 
 
ロシア軍が制圧した地域の住民がこうした過酷な状況にあることが、次々に明らかになる中、国際社会がこの事態を引き起こした当事者の責任を必ず追及するつもりであることをウクライナの被害者に伝えるべきだ。 
 
戦争犯罪などの国際人道法違反 
 
民間人の故意の殺害、強かん、拷問、捕虜の非人道的な扱いは、人権侵害であり、戦争犯罪である。戦争犯罪の実行者は刑事責任を問われるべきである。指揮責任の原則では、指揮官あるいは大臣や国家元首などの政権首脳は、自軍による戦争犯罪を知るあるいは知る立場にありながら、その行為の阻止や行為者の処罰をしなかった場合にも刑事責任を問われなければならないとしている。 
 
アムネスティ国際ニュース 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。