2022年05月16日21時46分掲載  無料記事
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教育

国際卓越研究大学法案を廃案に! 大学教員らが院内集会

 「稼げる大学」の具体化を目的に、政府が国会に提出している「国際卓越研究大学法案」の審議が大詰めを迎えている。衆議院では既に4月28日の本会議で可決されはしたものの、その後も「大学の自治を脅かす」「学問の自由を阻害する」という声が上がり続け、5月16日時点で17,000人以上の人々が、Change.org上で法案への反対の意思を示している。17日に参議院文教科学委員会、18日に参議院本会議での採決が見込まれる中、16日には集められた署名が文部科学省の担当者に手渡されることとなった。 
 
 署名提出後に開催された集会では、大学教員や学生らが法案の廃案を強く求め、その問題点に言及した。集会を主催した稼げる大学法案の廃案を求める大学横断ネットワーク(横断ネットワーク)の呼びかけ人である駒込武氏は、「政府与党は参考人意見陳述の機会すら設けずに、明日の委員会でたった3時間半の審議でこの法案を採決しようとしている」とし、このような政府与党の姿勢について、「大学の研究力を高めるという問題を真剣に考えていないということ」と疑問の声を上げた。 
 
 また、同じく横断ネットワークの呼びかけ人である米田俊彦氏は、「(国際卓越研究大学法案の成立は)特定の大学を国策の手段にすることにしかならない」と指摘。政策の立案・調整を目的とした機関である科学技術・イノベーション会議が国際卓越大学の認定に関与することについて、「学術専門的な評価を度外視している」と警鐘を鳴らした。 
 
 集会には立憲野党の国会議員も参加。日本共産党の宮本岳志衆院議員は、「この法案はチーム甘利が絡んで、その人脈の中で動き始めた」と法案の出発点に触れつつ、「(国際卓越大学に)選ばれた側も3%の成長のために研究が歪められる。誰もハッピーにならない」と強調した。 
 
 集会に参加をした東京大学の学生も「大学は利権が渦巻く場ではなく、見識を広げる場であってほしい」とし、学問の府としての大学が企業のような利益ありきの体制に変わっていきかねない状況に対する不安な胸の内を語った。この法案の成立により、大学の授業料が値上げされる可能性も示唆されており、これについてビデオメッセージを寄せた東北大学の学生は「金銭的に余裕のない学生は進学を諦めるような状況も起こり得る」と指摘した。 
 
 日本の未来を担う学生の選択肢を狭め得るこの法案を政府はどう捉えているのか。今後の日本の教育政策の在り方が問われている。 


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