2022年07月16日12時26分掲載  無料記事
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国際

NATOの夏戦略 V.S. ロシアの冬戦略  トマス・フリードマンのNYTコラムから

 ニューヨークタイムズの著名な国際ジャーナリストでコラムニストのトマス・フリードマンが先日、The Ukraine War Is About to Enter a Dangerous New Phase(ウクライナの戦争は新たな危険な局面に移行しつつある)というタイトルの文章を載せました(7月12日付) 
 
https://www.nytimes.com/2022/07/12/opinion/ukraine-russia-putin.html 
 
 興味深かったので紹介しますと、プーチン大統領が戦争を引き延ばして、冬まで持ち越せば、ロシアに有利な展開になると計算しているのではないかというフリードマンの読みです。それに対して、NATOは夏の間にロシアを撤退させることを想定していたのではないか、というもので、NATOにとって戦争しながらの冬の到来は、何よりも燃料費の高騰とインフレが欧州全域を襲って、次第にNATOが追い詰められて、ウクライナにロシアとの休戦ないし講和条約を結ばせる圧力になるのではないかというものです。ロシアは初戦では兵士の経験不足もあり、将軍たちも多数死んでしまい、プーチン大統領の計算ミスが目に付いたのでしたが、ロシアは巻き返しているというものです。 
 
  フリードマンの読みは当たっているのでしょうか。つい先日、プーチン大統領はイランとトルコへの訪問に出ましたが、これはまさに冬まで引き延ばすための同盟国の確保ないしは物資の補給のための準備すなわち兵站ではないでしょうか。こうした一方で、米国のバイデン大統領はこれまでサウジ系米記者殺人事件の黒幕ということで強く非難していたはずのサウジアラビアのサルマン皇太子と会見しています。これは燃料代高騰で疲弊する経済の立て直し策です。いずれにしてもロシアは中国だけでなくイランとトルコを味方につければ、インドは別としてもユーラシア大陸の大国を味方につけたことになり、NATOの思惑通りには展開しないだろうと想像されます。 
 
 ロシアの冬戦略と言えば学生時代に読んだトルストイの「戦争と平和」が懐かしく思い出されます。モスクワに攻め込んだナポレオン軍がロシアのクトゥーゾフ将軍のモスクワ焼土作戦にはまって、宿もなく冬を迎えることになってしまう。あるいは、ヒトラーのソ連侵攻が思い通りに進展せず、ロシアの冬を迎えて大敗し、第二次大戦の流れを変えてしまう。今回は攻め込まれているのはウクライナであり、攻めているのはロシアで、ロシアが天然ガスや燃料を握っている、という意味で、新しい展開でしょう。しかし、それでもどこか古典的なパターンを踏襲している印象があります。 


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