2022年07月25日19時13分掲載  無料記事
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アジア

ミャンマー民主派元議員ら4人の死刑執行 問われる国軍への日本政府の対応

 ミャンマー軍評議会は7月25日、アウンサンスーチー国家顧問が率いる国民民主連盟(NLD)の元議員と民主化活動家ら4人の死刑を執行したと国営メディアを通じて発表した。政治犯の死刑執行は1976年以来。国内外の批判が高まるのは必至で、昨年2月のクーデター以来、欧米諸国と一線を画して国軍に宥和的姿勢をつづけてきた日本政府の対応があらためて問われよう。(永井浩) 
 死刑が執行されたのは、スーチー氏側近のNLD元議員ピョーゼヤトー氏と著名な民主活動家のチョーミンユ氏ら4人。国軍が設置した軍事法廷が「テロ行為」に関わったとして今年1月に死刑判決を言い渡していた。 
 死刑の執行は、軍評議会 情報省の副大臣で報道官のゾーミントゥン少将が6月3日に承認したと明かしていたが、いつ執行されたかは不明。東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国カンボジアのフン・セン首相が軍評議会トップのミンアウンフライン総司令官宛てに執行を再考するよう書簡を送ったほか、国連の事実調査団ニコラス・コームジャン代表は「政治的な理由で抵抗している人物に対して死刑を執行することは、戦争犯罪または人道に対する犯罪にあたる」と非難していた。 
 クーデターに反対して民主主義の回復をもとめて立ち上がった広範な市民の非暴力「不服従運動」に対して、国軍は残忍な武力弾圧をつづけた。市民の犠牲者は現時点ですでに2千人を超えている。 
 軍評議会はクーデターで拘束したスーチー氏を、汚職などの罪で裁判にかけ、相次ぐ有罪判決を下している。彼女は首都ネピドーの住居に軟禁されてきたが、今月初めに刑務所の独房に収監された。 
 さらに今回の死刑執行により、国民は民主化運動への弾圧がさらに強化されるものと警戒感をいだいている。 
 欧米諸国は民主主義を破壊する国軍の暴挙を厳しく非難、クーデター直後から国軍指導者や国軍系企業にさまざまな制裁措置を強めてきた。また各国政府はミャンマー国民の側に立つ姿勢を明確にしてきた。 
 しかし日本政府は、われわれは国軍とスーチー氏側と「独自のパイプ」を持っているので、それをつうじて欧米とは異なる平和的な解決をめざすと主張してきた。だが「独自パイプ」は何の成果も挙げないままとなっている。またマスメディアも政府の空念仏の唱和を繰り返すだけである。 
 日本は欧米とおなじ民主主義国家のはずである。また日本はミャンマーへの最大の政府開発援助(ODA)供与国である。だから圧倒的多数のミャンマー国民は日本政府に対して、ODAを武器に国軍に民主主義回復への圧力を強化するよう求めた。またODA事業をつうじて政府の資金の一部が国軍に流れている事実を指摘し、在日ミャンマー人らは「日本のお金で人殺しをさせないで」「日本は国軍と手を切れ」と外務省に訴えてきた。だが日本政府は新規ODAの供与は停止したものの、既存のODAは続行、われわれは国民の側に立つとの旗幟を鮮明にすることもない。 
 国民の支持を得て当選したNLD議員らの死刑執行という国軍の新たな暴挙に対しても、日本政府は「独自パイプ」による解決という空念仏を繰り返しつづけるのだろうか。 


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