2022年09月11日08時09分掲載  無料記事
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コラム

本の値段と物価高と国葬と   来年は1ドル=180円台まで?

  私は翻訳文学の読書を核にしたYouTubeチャンネルを作って昨年来運営していますが、昨今の円安とインフレは読書家にとっても馬鹿にできない一大事です。特に洋書関係はアベノミクスで円が外国通貨に対して減価しているために、ますます障壁になって、あたかも外国文化に対する予防壁のようです。外国旅行についても、コロナと同時に通貨の面でもWで難しくなりつつあります。現在、1ドル140円台で、これは私が大学生だった1980年代半ばの為替水準です。さらに榊原英資氏は来年には1ドル180円台まで円安が進行する可能性があると語っているようです。 
 
※TBS「2023年には180円と市場は予想」「悪い円安ではない」“ミスター円”榊原英資・元財務官が見る現在の円安 ポイントは“日米の金融政策の差” 
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/148493?display=1 
  グローバリゼーションを推奨してきた米経済学者のスティーグリッツは、グローバリズムでは産業・業種によって得をする業界と損をする業界に必ず二分されるため、儲かっている業種から損を被っている業界に政治の力で富を配分しないと公平性を欠く、と自分で書き下ろした超分厚い経済学の入門書で説いていました。ここがポイントです。政府の円安誘導で利益を出してきた諸業界から損を受けてきた諸業界に利益配分が行われてきたのでしょうか?私には行われてきたとは思えないのです。 
 
  安倍元首相が行ってきた経済政策「アベノミクス」はグローバリズムと通底していました。その意味で、安倍政権の約8年は憲法論争以前に、経済学的にあるいは産業レベルで見ても、国民を分断し、特定の受益層の支持を固めて、報道統制と低い投票率を追い風にその分断から利益を上げてきた経済政策だったのではないかと思えてなりません。したがって国民を分断してしまった政治家を国葬にすることは、分断を深めこそすれ、裂け目をふさぐことには全然ならないでしょう(むしろ亀裂を固定し、さらに拡大するであろうために)その意味で、故・安倍晋三元首相は国葬してはいけない政治家だと私には思えます。従来同様に、自民党と内閣で行えばよいのではないでしょうか。自民党政権が国葬にこだわる理由は1つしかなく、それはアベノミクスの受益産業の経営者たちと労組に対して、今後もこの分断政策を継続する、という自民党の姿勢を示すことにあるはずです。国葬でありながら、たとえ国民の半数が反対しても岸田首相が(内心では)平気な理由がここにあります。 
 
 しかし、このインフレの進行はそうした計算を行ってきた天動説的な地盤自体を揺り動かし、壊し始めているように見えます。貧しい庶民がグローバリゼーションを(しぶしぶとであれ)受け入れてきた理由は100円ショップのおかげでした。しかし、これが300円ショップや500円ショップになったら、大きな変動でしょう。「贅沢は敵だ」が再びスローガンになる本格的な貧困の時代が迫ってきているかもしれないのです。今後、中国およびその傘下の国々と敵対する日本政府の政策が進めば、円安にさらにもう1つ物価高の要因が加算されます。 


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