2022年09月29日15時34分掲載  無料記事
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政治

国葬と連合の芳野会長   

  安倍元首相の国葬について、歴史修正主義との関係を書きましたが、1つ書きそびれたことがありましたので、加筆します。私は前の稿で安倍元首相は目標の70%は達成したであろうと書きました。この達成というのは安倍首相の思想から見た時の達成度を意味しています。これは2015年の安保法制で、100%完全ではないけれども70%は日本国憲法を壊すことができたのです。では、残りの30%は何かと言えば、これも私の考察に過ぎませんが、日本国憲法から国民主権を削除することだったのではないかと推察します。 
 
  国民主権を憲法から削除し、国民主権を廃止し、主権を国民から完全に奪った時に初めて「戦後レジームからの脱却」は完成したはずです。このことを考えた時、「連合」の芳野友子会長が自民党との関係を深め、国葬にも「労働者の代表」という自己認識で参列したことは象徴的なものに思えます。 
 
  国民主権を喪失した労働者は、国家のために働く労働者という位置づけになるでしょう。これは第二次大戦中の工場などへの学生や労働者の大量動員を思い出せば明らかです。実際、2015年の安保法制にはこうなる軌道がすでに描かれていました。国民全員が有事に協力を求められるであろうことであり、閣議決定1つでそうなりえるであろうことです。そして、このことは日本における労働観を100%変えるものでしょう。日本の主要な産業界が安倍首相と自民党を支援したことの本質的な意味もここにあったのではないかと推察します。主権を国民、あるいは労働者が失うことによって、兵士が戦死するのは戦争ならやむを得ない、というのと同じ意味で、労働者が過労死することはやむを得ないということになるのではないでしょうか。過労死が容認されるなら、どんな労働の問題も容認されうるでしょう。 
 
  安倍首相がやり残した残りの30%とは、国民主権の憲法からの削除であり、その意味を労働に焦点を当てて考えると有事ではなくても、労働者の権利を日常的に根こそぎ奪うことが可能になります。労働者の代表を自認する「連合」の芳野会長が国葬に参加を表明したことは、「連合」という労働組合が今日存在している意味を国民に広く示した象徴的な機会となったと思います。 
 
 
 
■労働組合と安保関連法制 ドイツ労働戦線(DAF)と産業報国会 ドイツでは労組がまず解散させられた 
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「ナチスが全権委任法を制定してファシズム体制に移行したのが1933年3月、それからわずか2ヶ月後の5月にナチスが行ったことはドイツのすべての労働組合を解散して、新たに労使一体の産業報国組織である「ドイツ労働戦線」(DAF)を創設したことだった。DAFは労働者が経営者に一方的に服従する組織だったとされる。第一次大戦中のようにストライキを打たれたら、戦争遂行にダメージを受けるからだろう。ということはもう労働者はストライキもデモも打てなくなってしまったのである。 
  日独伊三国同盟の一国である日本ではというと、「事業一家」という思想のもと、労使一体となって国に奉仕する産業報国会という組織が設立され、加入率は全国民の70%近くに及んだとされる。ドイツでも日本でもファシズムの戦時体制への移行と、労働組合の解体、再組織化が同時に行われた。労使一丸となって戦争に勝つための、総力戦体制になって行ったのである。」 


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