2022年10月07日16時53分掲載  無料記事
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難民

【シンポジウム】在日クルド人が日本で初めて難民認定 その意義とは

 今年7月に札幌市在住のクルド人男性が日本で初めて難民として認定されたことを受け、9月23日に埼玉県蕨市で難民認定の意義と入管法の問題点等について考えるシンポジウムが開催された。主催は、在日クルド人支援などに携わる市民団体「在日クルド人と共に」。 
 
 シンポジウムでは、日本でクルド人が置かれている境遇について、大橋毅弁護士が解説。法務省や入管庁のこれまでの対応について、「一般的に(全ての)難民に対して厳しいが、トルコ国籍のクルド人には特に厳しい」とした上で、「これまで(クルド人を)全く難民として認めてこなかった経緯を踏まえると、今回の難民認定がどれだけ意味のあるものかがわかる」と語った。 
 
 また、難民として認定されたクルド人男性が原告となった札幌高裁の難民不認定取消訴訟について、原告代理人として訴訟に携わった山田幸司弁護士もオンラインでシンポジウムに参加。難民不認定の取り消しを求めた札幌高裁の判決について、「裁判所は、(トルコ国内の)一般情勢について、『こういう情報があります』ということではなく、“事実”として認定している」とし、この点を「かなり踏み込んだ勇気のある判断」と評価した。また一方で、「今回入管は、裁判所に言われたことで嫌々難民として認定しており、これをきっかけに行政がガラッと変わるというような楽観的な見立てはしていない」と述べた。 
 
 現行の入管・難民制度は、難民認定の判断基準が明示されておらず、全件収容主義に基づき収容も長期間に及ぶ傾向にあることから、支援団体などから「人権を軽視している」と問題視されてきた。シンポジウムに登壇した立憲民主党の石橋通宏参院議員は、現行の制度について「非常に国際的に恥ずかしい内容になっている」と指摘し、「私たちが新法としてこれまで国会に提出してきた法案こそ国会で審議されるべきだ」と、これまでの制度とは異なる新法を成立させる必要性を訴えた。 
 
 シンポジウムの会場には150人以上の参加者が集まり、一時は立ち見が出るほどとなった。この状況に「在日クルド人と共に」の松澤秀延理事は「この会場に多くの人が集まってくれたことで、今後の活動を進める上で励まされた気持ちになった」とし、「蕨市や川口市に2,000人以上いるクルド人と一緒に日本社会を作っていきたい」と強い口調で語った。 


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