2022年10月30日11時50分掲載  無料記事
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国際

少女殺人事件にフランス極右が追悼・反移民集会 その2 

  昨日、ローラという12歳のフランス人少女がアルジェリア人で不法滞在中の24歳の女性にレイプされ、惨殺された事件の波紋を紹介しました。大統領選に出馬した極右論客のエリック・ゼムールらが追悼集会を呼びかけ、各地で集会が持たれました。中には日本の在特会的な言葉を発して、夜の通りを練り歩くシーンもSNSに上がっていました。以下の「ヴァレール・アクチュエル+」というYouTubeチャンネルは、極右・ナショナリストの雑誌ヴァレール・アクチュエルの動画配信サイトで、先日、パリのダンフェール・ロシェローというライオンの彫刻のある広場でのローラ追悼・反移民集会の模様をUPしていました。 
https://www.youtube.com/watch?v=zaivksQpmHA 
  紹介される参加者たちのコメントは、左派・中道の政治家やメディアがこれまで取って来たスタンスに批判的なものばかりです。ずっと自分たちの声が抑圧されてきた、という思いが込められていました。右派のジャーナリスト・作家のローラン・オベルトンは、もういい加減に現実に目を向けろ、と話しています。メディアは左派に支配されていると彼らは感じており、この集会は、政治には関係がない重要なことなんだ、という声もありました。典型的なのは「Le Laxisme Tue(寛容主義が殺す)」というスローガンです。このスローガンは主催者側が大きな幕に張り付けているもので、デモに参加すれば誰でも自然と頭にしみこんでいくでしょう。 
 
  このスローガンは「喫煙は殺す(Fumer tue)」のバリエーションであり、パロディです。移民受け入れ、移民への待遇に寛容だったために、ついにはこのような凄惨な事件まで起きてしまった、という感覚が一言で表現されています。これを見た時に近年起きている外国人や移民の人々による一連のテロ事件などもフランス人の脳裏には喚起されてくると思います。ローラの両親が娘の死を政治に利用しないで、静かに追悼してほしい、という願いを出していましたが、このスローガンは政治のプロパガンダに他なりません。呼びかけ人のエリック・ゼムールはラジオ番組で、政治に利用していないと語っていましたが、実際には政治的なメッセージがあるのです。 
 
  今年はフランスの極右にとっては躍進した年で、国会に極右政党の国民連合は下院議員89人を送り込み、大統領選でも2017年から国民連合のマリーヌ・ルペン候補がはるかに票を積み増していました。こうした年にこの事件がメディアで大々的に取り上げられて、その猟奇性や被害者の幼さが報じられることで、「寛容主義は殺す」という言葉がリベラル派にシンパシーを持っていた人々のこころにも沁み込んでいくものと思われます。 
 
  今のフランス政治は、左派の小党を極左政党が率いる野党連合に集約すると、極左、中道、極右の3極に分かれており、マクロンの中道政党が左と組むか、右と組むかで大きく変わります。こうした事件が起きると、大衆が右に傾いて政界が大きく変わっていく可能性があります。 


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