2022年10月31日00時03分掲載  無料記事
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独仏TV局ARTEの習近平のドキュメンタリー「習近平の世界」  汚職摘発キャンペーンで政敵を一網打尽 絶対権力を確立

  習近平国家主席が率いる中国は、中国共産党が勝利した1949年から100年後の2049年に経済でも軍事でも世界一の大国を目指している、と独仏のTV局ARTEの習近平のドキュメンタリー「習近平の世界」で語られます。それは中国が欧米列強に屈辱をなめたアヘン戦争から約200年後になります。これは昨年放送され、現在はYouTubeで公開されています。フランス語ではありますが、習近平国家主席の少年時代から今日まで、情報満載です。 
https://www.youtube.com/watch?v=bKqQXqyQGP8 
  ソ連のスターリンと同様に、習近平は自己の政治権力を確立する際に「反汚職キャンペーン」を行って、政敵を一網打尽にしたことが語られます。習近平国家主席が登場して間もない頃、私は何度か汚職摘発キャンペーンが行われた記事を読みましたが、その真意は当時の私にはよくわかりませんでした。しかし、その核心はどうも政敵を倒すことにあったらしいのです。中国の政界では汚職が普遍化しているために、反汚職という建前で政敵を一網打尽的に逮捕するのは難しくなかったことが指摘されています。そうした逮捕が繰り返されれば、党員も国民もうっかり政府の方針に逆らうような発言はできなくなるでしょう。しかも、スターリンの場合と同様に、政敵を始末しなければ逆に自分が寝首をかかれてしまうという恐怖感が存在しているようです。 
 
  このドキュメンタリーでは習近平の少年時代も語られます。彼の父親は毛沢東の側近でエリート政治局員だったのですが、文化大革命の際に敵とみなされ、パージされてしまい、家族は辛酸をなめたとされ、習近平自身も下放されていました。その際に、彼は毛沢東の言葉を暗記し、その言葉が自分と一体化するほどに読み込んだと語られます。つまり、今の中国の政治の力学には、文革期の毛沢東の影があるのです。リーダーに歯向かうものは力づくで容赦なく押さえつけてしまう。そうした政治を若い頃に、習近平は自分の脳というよりもむしろ体で体得したという風に読めます。そして、その背景には、やはりアヘン戦争以来に中国が日本も含め、欧米列強や先進国からなめさせられた屈辱が見え、その逆転劇として中国が目指すべきと彼が考えている世界一の大国像が見えます。 
 
  このドキュメンタリーで説明されているのは、中国は西欧の民主主義とは異なる政治体制を誇っており、西欧よりも豊かになれると自信を持っていることです。習近平国家主席がアフリカ諸国を訪問しながら、西欧型の民主主義などは必要ないんだ、そんなものはなくとも私たちは豊かになった、という風にアフリカの指導者たちに風に語りかけるさまは、極めて自信に満ちています。日本の安倍政権時代も西欧型の個人主義に立脚する民主主義から離脱しようと模索し、もがいた約8年間でした。この日中両国がともに西欧型民主主義から離脱しようと大きく政治の舵を切っていたことは特筆されることでしょう。ファシズム化は一線を越えて、一定以上進むと、内部から変えるのが格段に難しくなりますが、この10年で中国は明らかに一線を越えたのです。 


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