2022年11月21日21時43分掲載  無料記事
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農と食

ネオニコ系農薬イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす

 北海道大学などの研究グループは11月18日、ネオニコチノイド系イミダクロプリドを投与した卵から生まれたヒヨコに自閉スペクトラム症(ASD)様の視知覚障害が起きると専門誌 Cerebral Cortex Communications に発表した。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 卵の重量に対して0.1〜1ppmのイミダクロプリドを投与したヒヨコに自閉スペクトラム症のような視知覚障害が発生したという。そして、自閉スペクトラム症に治療効果が示唆される薬剤ブメタニドを孵化直後のヒヨコに投与すると、その障害が消失したとしている。 
 
 研究グループはこの研究結果と人への影響に関し、「妊婦が散布された殺虫剤に直接暴露した場合、どれほどの量が胎児や新生児に移行するかに応じてリスクが発生すると考えるのが妥当です。十分な注意が必要です」としている。 
 
・Cerebral Cortex Communications, 2022-11-18 
Fetal blockade of nicotinic acetylcholine transmission causes autism-like impairment of biological motion preference in the neonatal chick 
https://academic.oup.com/cercorcomms/advance-article/doi/10.1093/texcom/tgac041/6779985 
 
・北海道大学, 2022-11-18 
生き物らしい動きを捕らえる視知覚の発達過程を解明〜自閉スペクトラム症(ASD)の発症機構の解明に期待〜 
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221118_pr.pdf 
 
 これまでに妊娠中に母体から胎児へのネオニコチノイド系農薬の移行に関する研究結果が発表されている。北海道大学などの研究グループは2019年、出生直後の新生児の尿からイミダクロプリドとアセタミプリドの代謝物質を検出し、ネオニコチノイド系農薬が母体から胎児に移行を確認した初めての研究結果を発表している。 
 
・第 28 回環境化学討論会,2019-6 
ネオニコチノイドの母子間移行の実態と移行メカニズムの解明 
https://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2019/06/kankyokagaku.pdf 
 
 神戸大学などの研究グループは2020年、マウスに経口投与したクロチアニジンとその代謝物が、胎盤を通して胎児にほぼ同じ血中濃度で移行することを確認したと発表している。 
 
・Toxicology Letters, 2020-1-20 
Quantitative elucidation of maternal-to-fetal transfer of neonicotinoid pesticide clothianidin and its metabolites in mice 
  https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378427420300035 
 
 2022年には、スイス・ヌーシャテル大学とローザンヌ大学の研究グループは小児の脳脊髄液からネオニコチノイド系農薬イミダクロプリドなどとその代謝物質が検出されたと発表している。研究グループは、ネオニコチノイド系農薬による汚染は、ハチなどの非標的昆虫だけでなく、子どもにとっても環境上の危険である可能性を示唆しているとしている。 
 
・Environmental Health, 2022-1-11 
Multiple neonicotinoids in children’s cerebro-spinal fluid, plasma, and urine 
  https://ehjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12940-021-00821-z 
 
 このようにネオニコチノイド系農薬の母体から胎児への移行はほぼ確実に起きている。北海道大学などの研究グループが指摘するように、母体から胎児や新生児への移行量がどの程度なのかをはっきりさせ、ヒトでのASD様の視知覚障害が起きるかを確認すべきだろう。 
 
 これまでに福島県有機農業ネットワークの調査から、食材を慣行農産物から有機農産物に切り替え、30日間食べ続くることで尿中のネオニコチノイド系農薬は約90%低減できることが分かっている。 
 
・福島県有機農業ネットワーク, 2019-3-28 
有機農産物を食べることで、殺虫剤ネオニコチノイドへの曝露を低減できる 
http://fukushima-yuuki.net/2019/03/28/%E6%9C%89%E6%A9%9F%E8%BE%B2%E7%94%A3%E7%89%A9%E3%82%92%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%80%81%E6%AE%BA%E8%99%AB%E5%89%A4%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%81%E3%83%8E/ 
 
 予防原則に立ち、妊婦の食事を、胎児への暴露をより低減できる有機農産物主体の食事に切り替えることも考慮されてもよい。 
 
【関連記事】 
 ・ネオニコの胎児への移行を初めて確認 安全性再検討が必要と指摘 
http://organic-newsclip.info/log/2019/19080994-1.html 


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