2022年12月03日13時28分掲載  無料記事
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アジア

外国籍の子どもたちを支える ワーワーウィンさん(ミャンマー生まれ・岐阜県美濃加茂市) 田村みどり

 東京から新幹線などで3時間。日本のほぼ中央に位置する岐阜県美濃加茂市。最寄り駅に着くと、ミャンマー生まれのワーワーウィンさんが笑顔で待っていた。街では、学校帰りの小学生たちが彼女に駆け寄り、学校での出来事を話し始める。この地に暮らして14年。一人息子のチョウソウサンさんを育てながら小学生の学童指導員を続けてきた。 
 
▽中学生の学習をサポート 
 今年4月から「言葉のカベがある外国籍のの子どもたちを支えたい」と地元中学で、外国児童のための日本語指導支援員として働き始めた。同地には外国籍の人が1割以上暮らす。学校では生徒の国語、社会、数学などを英語でサポートし、日本語音読や漢字練習の手助けも。「学んでいるのは私の方。日本の歴史や政治は勉強になります」とほほえむ。 
 ワーワーさんより長く岐阜に住む夫のミャティハァさんは、金属製品製造、大型機械加工などを扱う会社の役職者。地域の自治会や高校の父母会の役員を務めたこともある。息子のチョウさんは、金沢の大学4年生で大学院進学を目指す。一家は日本に溶け込んでいる。 
 
 1996年、国費留学生としてミャンマーから来日したワーワーさんと、留学生に日本語を教えるボランティアを行っている筆者は、彼女が居住する駒場留学生会館(東京都目黒区、現在は東京大学の留学生ロッジ)で知り合った。彼女はいつも笑顔。「ミャンマーはほほえみの国」。私の第一印象だ。ワーワーさんは中央大学大学院経済学研究科で人口論を専攻。異国での生活は大変だったに違いないが、彼女から苦労話を聞いたことはない。 
 来日して驚いたのは、部屋の窓から見える井の頭線の発着が時刻表通りだったことだ。八王子市の多摩キャンパス大学院研究室からの帰りが最終電車になることもしばしば。「女性が夜一人で歩くことができる」と感激した。 
「日本は安心・安全に暮らせる国。まじめで勤勉な日本人が印象的」と語る。6年後に大学院を修了、経済学博士に。そして結婚、出産も。 
 
▽祖国の夜明けを信じる 
 ミャンマーは2021年2月、国軍がクーデターで全権を掌握、現在も政治情勢は不安定で、人道状況は悪化の一途をたどっている。民主化を求めるミャンマーの若者たちは、命を賭して政府と闘っている。「大学、小中高の先生は、学校に出勤しないことで抗議。市民不服従活動を行っています」。祖国を思う時、ワーワーさんの笑顔が消える。「今後も未来ある子どもたちの教育現場を、世界のどこかで支えたい」とまっすぐ前を見据えた。それがミャンマーの夜明けにつながると信じている。 
 平和、人権は私たちが守るべき共通の価値観だ。ミャンマーの現状は私たちの問題である。 


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