2022年12月23日09時13分掲載  無料記事
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国際

囚人を傭兵会社が兵士としてリクルート 権威主義国家から独裁国家に移行したロシア〜戦争目的で法律を恣意的に運用〜

  BBCが9月に公開した動画では、ロシアの傭兵企業「ワグネル」が刑務所で刑期短縮と引き換えに兵士を募集しているものだった。BBCは記事で、ロシアの法律では軍務や傭兵企業での奉仕によって減刑するシステムはない、と書かれているが、動画の記事で傭兵会社の男が囚人たちを前に半年兵士として戦場で働けば自由になる、と語っている。 
 
※ロシアの雇い兵組織「ワグネル」が刑務所で募集 動画が流出(BBC) 
https://www.bbc.com/japanese/62925631 
以下のBBCの英語版では、実際のセリフに英語字幕がつけられている。 
https://www.bbc.com/news/world-europe-62922152 
  たとえ、兵士が不足していたとしても、囚人を軍務に使って減刑(というか釈放)していたのであれば、懲役という制度、あるいは刑法自体の存在価値が失われていくのではないかと思われる。すなわち、刑務所の外での活動によって刑期が短縮されるのであれば、刑務所に閉じ込めておく必要がない、ということもできるのである。刑法のシステムを方や保有し、刑法のシステムを方や無効化するということは、法の恣意的な運用に過ぎない上に、さらにはそれを国家として打ち出したことを示している。 
 
  もし、そうなのであれば戦争のために法制度を無意味化し、すべてを恣意的に独裁者が決める独裁国家のカテゴリーにロシアが入ったことを意味する。これまで「権威主義政権」と名付けられてきたのは、まだしも法秩序を尊重する建前を置いていたからだった。その意味では、囚人の兵役制度の行方はロシアの政治体制を考える上でも、重要な要因となるだろう。またLGBT宣伝禁止法(※)が制定されたことがニュースになったが、これもファシズムの特徴にある独裁体制の「敵」を指定することに該当する。ファシズムは「運動体」であり、求心力を維持するためには椅子取りゲームと同様に、常に「敵」を指定して、処罰することで、政権の味方であることを国民に強いていく。 
 
  その意味では、戦争を遂行する独裁国家が世界の核大国である、という未曽有の生存の危機に人類は入った。これはロシアのみにとどまらず、トランプ元大統領による2021年1月のクーデターの可能性や中国の独裁化を視野に入れると、核抑止どころか1日も早く世界から核兵器を撤廃しなくてはならないことがわかる。すなわち核大国の民主国家が独裁化したり、核大国の権威主義国家が独裁化する可能性が増えてきたのである。日本においても将来、ミサイル配備を進めた上に核武装した後、軍事独裁国家になるリスクがある。いったん核武装してしまうと、独裁政権は圧倒的に地位が安泰になるのだ。 
 
 
 
※ロシアでLGBT「宣伝」禁止法が成立、プーチン大統領が署名 
https://jp.reuters.com/article/russia-rights-lgbt-idJPKBN2SP1KC 
 
 
■山口定著「ファシズム」(岩波書店) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201307301109292 
 「ファシズムと戦争は不可分である。すでにファシズムの運動の発生に関する部分で明らかにしたように、ファシズムはさまざまな意味で第一次大戦の落とし子であり、また国内政治を平和的な妥協と調整の作動する場ではなく、敵の絶滅を目標とする「戦争」にしてしまった運動であり、また、国内政治の唯一絶対の目標を次の戦争に備えた「国家総動員体制」の確立に置いた運動である。」 


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