2023年01月10日20時09分掲載  無料記事
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アジア

バイデン大統領のアフガン撤退演説を今一度 アフガニスタンの「内戦」にこれ以上米国人を送り込むことはできない

  2021年のバイデン大統領のアフガニスタンからの米軍撤退の声明を今いちど耳にすべきではないだろうか。私たちはどんなものでもアフガニスタンに与えてやった。にも拘わらず、アフガニスタンの大統領は国外に逃亡し、アフガニスタンの軍は崩壊した。アフガン軍が戦わないようなところに米軍がこれ以上いるわけにはいかない、とバイデン大統領は語った。しかし、忘れてはならないのは、アフガニスタンをぼろぼろに壊した主犯は米軍だということだ。この身勝手な演説は何だろうか。しかも、米軍のミッションは「驚くべき成功」(※)だったとも語っているのである。 
https://www.youtube.com/watch?v=EL87NeQutKo 
  私は反米ではないし、米文化に影響されて育ったと言える。それでも、こんな都合のいい演説を聞かされて、納得することはどうしてもできない。バイデン大統領は莫大な金をアフガニスタンに投じた、と言っているが、そこで死んだり、障碍者になったアフガニスタンの人々への鎮魂の言葉は聞こえない。バイデン大統領は「アフガニスタンの『内戦』にこれ以上、何代にもわたって米国人を送ることはできない」と言っているのだ。米軍撤退の直後にタリバンがアフガニスタン全土を制圧したのは記憶に新しいところである。そして、ベトナム戦争、朝鮮戦争、イラク戦争、これらの戦争が想起される。すべて「内戦」への干渉だったのだし、最終的に米軍は引き上げていったのだ。これは現政権を軍事的に倒すのは簡単でも、戦後の統治を確立することができないことを如実に語っているのである。そして、残されるのはインフラが壊された国土であり、極度の貧困と飢餓である。たとえ米国民が貧乏になろうと、米軍需産業と政治家には大きな利益の上がるビジネスだから、人が何万人死のうといつまでも続くのである。 
 
  この米大統領ないし米国の姿勢を振り返った時、東アジアで戦争準備を進めているこの大統領は、10年後、20年後になんと言うのだろうか。台湾と中国の「内戦」にこれ以上、米国人を送り込むことはできない、と米大統領がいつか言わない保証はあるのだろうか。あるいは、こうも言えるのだ。日本人と中国人の歴史的な確執に米国人の命を費やすことはできない、と。 
 
 
村上良太 
 
 
※Biden Defends Afghan Pullout and Declares an End to Nation-Building 
https://www.nytimes.com/2021/08/31/us/politics/biden-defends-afghanistan-withdrawal.html 


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