2023年01月27日20時20分掲載  無料記事
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コラム

戦後民主主義も憲法の素晴らしさも実感が持てない世代と圧倒的にリアリティを感じられた世代の間に体験の格差がある その2

  憲法改正をめぐる意識の格差の背景には、憲法のもとで過去に行われてきた理不尽な政策とそれによる社会の変容があるのではないか、と先ほど書いた。特に、平成時代の約30年間は、憲法の理念と政治・経済・社会の開きが大きくなっていた時代だった。すなわち、憲法を維持しながらも、実質改憲のような事態が社会に進行していたのだ。安保法制が制定された2015年は大きなデモが行われたが、憲法9条に限らず、様々な面で憲法の実質廃棄が平成時代に進行していたことをもっと重視すべきなのだ。身近な暮らしこそが憲法と関係しているのである。消費税導入の是非もそうだろう。多くの死票を生み出す小選挙区制もそうだ。日米構造協議以後、日本の憲法は死文化し、実質、廃棄されてきたと言って過言ではないのではなかろうか。その極みは10年近くにわたって、毎年10万人もの人々が自殺していたことである。これはもう戦争といっても過言ではない。教育予算を減らし、若者たちへの投資もケチっていた。さらに会社を維持するために、若者の雇用も厳しいものとなった。 
 
  憲法が危機にさらされている、というのは憲法の文言だけの攻防ではない。過去30年にわたる日本人の生き方、行動の決算が今日の憲法の危機なのだと考えたい。したがって、そこから演繹されることは、憲法を生かす、ということは過去30年間の憲法空文化の歩みを覆し、そこに真を入れていくしかない。そのためには、多くの人が他者を非難するだけでなく、自分自身を振り返ることが大切だと思う。それができなければ、日本人はこの憲法に値しない、ということになる。 
 
 
 
■林芳正・新文科大臣とマンスフィールド研修  日本をアメリカ的に構造改革させた政治家と「美しい国」 
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■マンスフィールド研修と対日政策   村上良太 
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■アメリカの岐路を振り返る〜新自由主義の黎明〜 
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