2023年01月29日11時51分掲載  無料記事
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政治

間接金融時代と直接金融時代の日本の首相の違い(仮説)〜宏池会の激変とグローバル化〜

  リベラル派とされた宏池会出身の岸田首相がなぜ期待外れだったのか?この理由をめぐっては、様々な見方が可能です。私は岸田首相が自分の思想を持たない権威主義的人間だったという見方を示したことがありました。しかし、一方で、客観的に振り返ってみると、昭和時代とれいわの時代で、宏池会といえども時代の波にさらされて変質したと言うこともできるのではないでしょうか。すなわち、昭和時代の宏池会の政治家たち〜池田勇人、大平正芳、宮澤喜一など〜の時代は経済の根幹をなす金の動きすなわち金融が間接金融システムでした。護送船団と呼ばれる大枠の中で、長期信用銀行を始め、各銀行が借り手企業の体力や可能性を見ながら、成長するのを時間をかけて待つことができた時代です。政治の足元にある経済が待つことができる構造であれば、政治家も長期的な視野に立った政策を作りやすいのだろうと私は推測します。 
 
  一方、1980年代、とくに90年代から加速した株式を中心とする直接金融の経済システムでは、瞬時に巨大な資本が国境を越えて移動するため、常に「その場しのぎ」とわかっていても投資家を惹きつける政策をし続けなくてはなりません。そして、その投資家たちの多くがウォール街にいます。このことが、岸田首相〜現在の宏池会の政策の激変と関連しているのではないでしょうか?小泉首相から安倍首相を経て、今に至るまで自民党の政治家たちがやっている政策は日本の長期的展望に欠ける政策ばかりです。労働者は疲弊し、物価高に苦しみ、そんな中で消費税が引き上げられ、暮らしは悪化しています。労働者の4割が非正規雇用で、安心してお金を使うこともできません。すべてが「今、ここ」以上のものがありません。これを考えると、まずは金融システムのあり方を真剣に考える必要があるのではないでしょうか?そして、この直接金融時代の短期的視野の思考では教育と研究がまったくもって疎外される、ということも考えるべきだと思います。 
 
  前に書きましたが、自民党政治家の変化を分析する時、本山美彦京大名誉教授による「金融権力」という本が参考になると思えてなりません。 
 
 
■本山美彦著 「金融権力 〜グローバル経済とリスク・ビジネス〜」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401170608015 
 
■マンスフィールド研修と対日政策 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201008192244414 
  現在の外務大臣の林芳正も宏池会系。宏池会激変のきっかけとなったのが、ひいては自民党激変のきっかけとなったのが、この林芳正氏だったと筆者はみている。その意味では現在の日本を設計した米資本主義を信奉するプログラマーであろう。 


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