2023年03月01日14時15分掲載  無料記事
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政治

春がきた。だが「平和・いのち・くらし」は厳冬だ 「パンとサーカス」の現代版 江守 信正

「パンとサーカス」とは、古代ローマの権力者が穀物を無料配布し、スポーツ観戦に熱中させ、人々を政治への無関心に誘導したことを指している。無関心層を作り出すことは権力者にとって、有効な政治手法だからだ。 
 ところが今は、それに代わって「食料危機と戦争の危機」つまり恐怖で国民を支配する動きが迫っていると言える。食料自給率の低下は危機的状況にあり、「安保3文書」が描く近未来は、戦争の恐怖が差し迫っていることを示している。 
 戦前日本は、1931年に満鉄爆破を突破口に盧溝橋事件、真珠湾攻撃から太平洋戦争へ。この間、治安維持法を大改悪して、特高を動員して戦争反対者を刑務所へ。議会は大政翼賛会に。新聞・放送を動員して、戦争へと国民を総動員した。その結果が敗戦だった。権力者が繰り出す「サーカス」に騙されてはならない。 
 昨年、突然ロシアがウクライナへ侵攻という思いもよらない事態が発生し、世界に大きなショックを与えた。戦車の列、ミサイル攻撃によって破壊された建物の瓦礫の山、悲惨な難民などをテレビで見せられ続けている。国連は国際法違反を指摘し、停戦決議を採択しているが先行きは全く不透明だ。仲介する国やリーダーも出てこない。こうした事態は経済、食料、環境問題に深刻な影響をもたらし、世界にどうしようもない不安を巻き起こしている。 
 「パンとサーカス」の現代版に対する世界的な大きな運動と闘いが必要ではないか。 
 
▽「原発再稼働・新設」容認の暴挙 
 岸田政権は、エネルギーの安定供給や気候危機対策を口実に原発の最大限活用を盛り込んだ「GX(化石燃料をできるだけ使わず、クリーンエネルギーを活用するための変革やその実現に向ける活動など)」実現に向けた基本方針を「安保3文書」案と同様に、2月10日閣議決定した。そこでは、「原則40年、新増設は想定していない」としていたものを、運転停止期間を除外して60年稼働を容認し、老朽化したものを建て替え、新増設も認めるというのだ。しかもGXを審議する原子力規制委員会では、1人が反対したにも関わらず容認の結論を急がせたのだ。 
 まだ福島原発問題は何も解決していない。現に政府が2011年3月11日に発令した「原子力緊急事態宣言」は発令中なのである。福島原発大爆発によって、発生した汚染水、放射性廃棄物の中間処理場すら決まっていない。避難者は3万人もいるというのに。さらに燃料デブリ取出しの見通しは立たず、廃炉工事終了のメドは全く立っていないのだ。 
 2月6日、トルコ南部で大地震が発生した。同じ地震国・日本では、東海大地震発生の危険性が日ごとに高まっていると報道されている中での暴挙だ。岸田政権は「安保3文書」では、アメリカ言いなりであり、原発問題は財界言いなりだ。 
 
▽「子どもやLGBTQ者も同じ人間なのだ」 
 岸田首相は「異次元の少子化対策」として子育て支援を打ち出した。基本は子育て世帯支援だが、バラマキ政策だ。この中で「産休者・育休者の学び直し」発言に対して「子育て中にそんな時間があるわけがない。何もわかっていない」と怒りの声が噴出した。 
 まず子育て環境を変える抜本的な制度を作り、恒常的な予算措置をとることが先だ。こどもは社会全体で育てる制度にすること。教育費完全無償化が第一だ。 
 首相秘書官のLGBTQに関するオフレコ発言が大問題になり首が飛んだ。しかしこれは秘書官の問題では決してない。岸田首相の「(同性婚などは)家族観や価値観が変わってしまう」という発言を受けてのものだ。自民党内に根強く残っている家族観・差別観は、封建時代の遺物であり、社会発展を阻害している。そしてその背景には統一協会がいるのだ。 
 こうした差別感は、外国人労働者問題にも通じている。政府が今国会に提出を予定している「出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案」は、外国人を人間としてみていない。2021年3月に名古屋出入国在留管理局で収容中のスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)を虐殺したのは、日本の入管なのだ。こんな差別意識丸出しの自民党と政府をいつまで許しておくのかが問われている。 
 
▽埼玉県立高校などに脅迫FAX 
 1月24日、埼玉県内137の県立高校に「本日13時34分までにお金を振り込まなければ生徒や教員を殺害する」とのFAXが届いた。学校は警察などと話し合い、原則臨時休校とした。翌25日にも県内233の中学校に、同様の殺害予告が届いた。27日にも県内289の公立小学校にも児童殺害予告がきた。 
 この大量の脅迫状は何を意味しているのだろうか。多くの人々は現在の社会に対して、多かれ少なかれ不満や怒りを抱いている。問題はそうした怒りや不満をどう解決するか、していけるかについての方法が分からないからではないか。「平和・いのち・暮らし」を破壊する正体を見極め、それとの闘いを組織することが必要ではないか。厳しい春になる。 


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