2023年04月23日21時46分掲載  無料記事
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コラム

21世紀の植民地主義 〜日本国民の上に君臨する「高天原族」〜 その5

  日本の内部に植民地を作る、というより日本を丸ごと植民地にして、日本人を支配する…その支配者が日本人だとしたら、どう考えたらよいのか。このような仮説を作る場合、日本人の上に立つ「高天原族」というものを仮に想定してみたいと思います。日本人を統治するために天から降臨したエリート集団というイメージです。私は今の自民党を中心とする政界や財界、マスメディアが形成している特権的集団というのは、この高天原族みたいなものではないかと思います。特定の民族的概念ではありませんが、同質の利益集団です。たとえば選挙に立候補する時に一族の家系図を披露するようなケースはその典型でしょう。とはいえ、一か所に集中しているのではなく、日本の各地にこのような人々は存在し、利益集団を形成しています。選挙の供託金をなるだけ高くして、庶民が政治にアクセスしにくくしています。選挙ではできるだけ有権者に投票に行かせないように報道を低調にする、高天原族の仲間がレイプしても逮捕しない、高天原族にたてつく人間は逮捕する、などなど。すでに法の前の平等は失われています。 
 
  国民主権を奪うように憲法改正を目指す与党議員が存在する理由は、まさに自分たちが統治される側の日本国民という意識がないからでしょう。国民の生活が大事、というような政治には概して関心がないのです。一番大切なのは高天原族による支配体制を継続することであって、そのためにはむしろ日本国民が疲弊して、政府を批判するような知力はない方が都合がよいのです。また、自分たちをライバル視するような経済力を持った外部の力(高天原族ではない外部の経済主体)はなるだけない方が良いに決まっています。そこで、高天原族の内部で国民から吸い上げた利益を配分することが基盤になります。海外に金をばらまくのは、グローバル化している高天原族の財界に便宜を図ってもらうためではないでしょうか。高天原族はメディアを支配し、国民には政府は国民のための政治を行っているという風に「国民の物語」を日夜吹き込み続けさせます。 
 
  おそらく昭和から平成に切り替わった頃のどこかで自民党はナショナリズムを放棄したのです。すなわち、日本国民のための政党であることをやめ、いわば高天原族のための政党に転じたのです。韓国のカルト宗教と密接に連携していけたのもこの転換と無縁ではありません。自民党とカルト教団の結びつきが最も深い時期に、安倍首相のモットーが「日本を取り戻す」だったことは象徴的です。この日本とは日本国民の日本ではなく、「高天原族」が支配する日本と見るべきでしょう。原発事故で国土が汚染されても、汚染水を海に垂れ流しても、戦争で日本国内にミサイルが飛んでくるリスクが増しても無頓着でいられるのは、被害を被るのは日本国民に過ぎないと考えているからです。小説家の安部公房は『方舟さくら丸』(1984)でこうした悪しき日本を描いていました。それは未来の日本のファシズムでした。高天原族とは、まさに核戦争が起きようと巨大地震があろうと、原発事故があろうと「方舟」に乗って生き延びることができる少数のエリートです。その一方で、高天原族は、原発は維持し続け、日本国民は徴兵し、植民地の住人である日本国民の貧しい老人たちには集団自殺してもらおうと考えているかもしれません。 
 
  もう1つ高天原族にとって重要なのは国民を無力感に浸しておくために、革命への嫌悪と拒否感を植え付けておくことです。どんなに理不尽な政治が行われても革命はいけない、という通念を植え込んでおきます。どんなことがあっても主の手を咬まないように飼い犬をしつけるのと似ています。近代初期の経営者は真剣に革命を怖れていたために、むしろマルクスの「資本論」を経営者が読み、従業員への福利厚生を手厚くする、というようなことがありました。そのようなことが革命を防ぐ道だと考えた経営者がいたものですが、今はそのような努力を払う人はいるのでしょうか。むしろ、監視と非正規雇用の拡大によって乗り切ろうとしているだけです。革命は必ずしも暴力や流血ではないのですが、革命=暴力のイメージを宣伝して恐怖をあおるのみです。国民から基本的人権や主権までも奪い取ろうとしている与党の政治家たちが、革命を道徳的に否定すること自体が本末転倒というものでしょう。しかし、軍隊を率いる植民地の宗主国が、植民地住民に暴力や抵抗は愚かだ、言うのは歴史の常です。近代民主主義の思想家ロックが提唱した抵抗権こそが米国の独立やフランス革命を成功させ、身分制社会や植民地支配を打破するものでした。この歴史を否定することはできません。 
 
 
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■21世紀の植民地主義 〜朝鮮植民地化と同じことを日本国民に〜 その6 
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