2023年04月28日21時54分掲載  無料記事
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コラム

21世紀の植民地主義〜朝鮮半島植民地化と長州閥〜その8

  朝鮮半島植民地化の歴史が、現在の「エリート」日本人による日本植民地化のヒントになると前に書きましたが、日本植民地化の先鞭をつけたのは私の仮説では小泉首相で、それを本格化したのが安倍首相でした。安倍首相の時代になって、国会できちんとした議論が行われなくなりました。憲法改正前から、実質的に憲法がなし崩しとなっていき、投票率が低下し、実質的に日本国民から参政権が失われていきました。安倍首相が誇りに思っていたのが祖父の岸信介で、満州国という植民地のトップレベルの行政官でした。 
 
  さらに、朝鮮半島では安倍首相が誇りにする長州藩の出身者が植民地化の先鞭をつけたことを忘れるべきではないでしょう。小倉紀蔵氏の『朝鮮思想全史』によると、「日本の朝鮮支配に最初からもっとも深く関わったのは長州藩出身者であった。特に統治の初期における要職は長州閥が占めた。これは、ある外国の統治に日本の特定地域出身者がほぼ全面的に関係したという点で、きわめて特徴的な事例であった。長州藩出身者が朝鮮で行ったことの暴力性は、突出している。この事実はもっと注目されてよいであろう」 
 
 小倉氏は、歴代の韓国統監と朝鮮総督のうち、初期の人びと(伊藤博文、曾禰 荒助、寺内正毅、長谷川好道は全員長州藩出身だったことを指摘しています。こうした朝鮮植民地化のノウハウは受け継がれていないはずがありませんし、歴史修正主義の根幹を形成している可能性があるのです。そして、時代が変わって、日本人を植民地的に支配するという時代が訪れた時、これらのノウハウが役に立たないはずがありません。 
 
  「併合植民地期に、<日本人1>が<朝鮮人1>を徹底的に蔑視し、過酷な差別を行い、暴力的な支配のみをした、というのは戦後に作られた虚像である・・(中略)・・・内鮮一体、皇国臣民化、兵站基地化という支配の巧妙さと複雑さを、極度に単純化してはならない」(小倉紀蔵著『朝鮮思想全史』) 
 
  小倉氏は、日本人1と日本人2、朝鮮人1と朝鮮人2というようにこの複雑さを理解するための仕組みを提案しています。すなわち、日本が当時、朝鮮を植民地化したというのは単純であり、日本と大韓帝国が合併したのだが、その性格は植民地的性格だったと述べています。 
 
  「もし日本1が朝鮮1に対して収奪や暴力的支配だけをしたなら、なぜこの時期に親日的な朝鮮人があれほどたくさん出現したのかが説明できないからだ」 
 
  小倉氏は「併合植民地」という概念を使って、このシステムを説明しています。このことは今日の日本人による日本の植民地化を考えるにあたってヒントを提供しているように私には思えます。実質的には、支配され、植民地化されながらも、それを好意的に受け取る人々の存在です。私はその鍵が、日本の場合、マスメディアだと考えています。 
 
  日本の植民地化を図りながら、ナショナリズムであるかのように演出し、国民が1つのように感じさせるためにはマスメディアと教育の動員が必要です。安倍首相がマスメディアの重要性を日本で誰よりも突出して理解していたのは間違いありません。旧統一教会に日本政界がここまで潜入され、憲法改正プロセスまで影響を受けていたにも関わらず、マスメディアではほぼ完ぺきに取り上げられず、安倍首相がなくなるまで隠し通したのでした。歴史的に見れば、満州植民地化と深く結びついていたのが、初期の電通だったのです。 
 
  「1932年 - 満州事変を受けて、政府は日本の情報通信機関を一元化して国家的通信社を作る必要があると判断。満洲国において当時、電通と競合関係にあった日本新聞聯合社の通信網を統合した国策会社「満洲国通信社」(国通)を創立」(ウィキペディア) 
 
  日本国植民地化は私の仮説に過ぎませんし、安倍首相という一人の政治家にそのすべてを期すつもりはありません。むしろ、主要なプレイヤーはマルチナショナルズと言われる多国籍企業群でしょう。とはいえ、第二次安倍政権以後の安倍首相のおよそ8年間に、日本政治の換骨奪胎が行われ、政治の危機が進行したことは事実なのです。その意味でも、朝鮮半島植民地化のプロセスを今後、私たち自身の未来を見据えながら検証する必要があるのではないか、と私は考えています。私は日本の植民地化とは、国民の実質的な政治参加からの排除、メディアを通した洗脳、重税化と低福祉化という形での徹底した搾取、国民主権の剥奪、基本的人権の剥奪、ということですが、最終的には憲法改正あるいは緊急事態条項によってこのプロセスが完成すると思われます。 
 
 
 
■マンスフィールド研修と対日政策 
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■趙景達著「近代朝鮮と日本」 
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■21世紀の植民地主義 〜「21世紀の初頭から世界的に退行」〜 その7 
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■21世紀の植民地主義 〜朝鮮植民地化と同じことを日本国民に〜 その6 
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■21世紀の植民地主義 〜日本国民の上に君臨する「高天原族」〜 その5 
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■21世紀の植民地主義 〜自国植民地支配のために天皇制も危機にさらす〜 その4 
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■21世紀の植民地主義 〜外国人研修生の苦難は明日の日本人の運命〜 その3 
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■21世紀の植民地主義 〜自国を植民地にして今後はもっと苛酷に収奪する〜 その2 
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■21世紀の植民地主義 〜自国を植民地にして敗者から収奪する〜その1 
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