2023年06月09日22時27分掲載  無料記事
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政治

4月統一地方選から衆院選挙を占う  既成政党が保革とも退潮 カルトとミニネオナチ政党が健闘  

 いつ衆院解散がおこなれてもおかしくない状況になったとメディアが伝えています。政局には関心はありませんが、自党の議席がどうなるかは私たちの暮らしに大いに関係があります。防衛力増強、原発再稼働、政府自らがおこなう外国人差別である入管法改悪、マイナンバーカードのでたらめ、などなどすべて許してしまいました。そこで、4月に行われた統一地方選挙の結果を振り返りながらこれからの政治の動向を考えてみたいと思います。(大野和興) 
 
 
 統一地方選は2023年4月7日と4月24日に行われた。知事選挙は11都道府県で、基礎自治体の市区町村では首長選挙が1,712市区町村で、議員選挙が4,889市区町村で行われた。相変わらず投票率は低迷を続け、若者は選挙にそっぽを向いている。しかし、何も変わらないように見えて、底流で何かが変わっている。気味の悪い変化もあれば、何か希望が持てる変化もある。地方選は私たちの最も身近な政治でもある。これからの国内政治をみる上で大きな意味を持っている。いくつかの視点からその結果を分析してみる。 
 
◆自公、立憲の退潮と維新の躍進 
 
 選挙の結果は、自民党、公明党が議席を減らし、日本維新の会が議席を大きく伸ばすという結果となった。自民党は前回選挙から215議席減の1,177議席で、全国の議席の過半数を維持しましたが、過去最低の議席数となった。日本維新の会は前回選挙から250議席増の527議席で、過去最高の議席数となり、立憲民主党は前回選挙から108議席減の160議席となった。 
 
 この結果は国政にも影響を与えている。公明党はこの統一地方選挙で過去最多の12人が落選、早々に地方組織の代表を集めて総括会議を開いて、衆院選挙に向けて体制の立て直しに入った。統一地方選挙で公明党は、各地の議員選挙に合わせて1555人を擁立し全員の当選を目指したが、12人が敗れ、総得票数も前回4年前と比べておよそ50万票減っている。 
 また関西で維新に大きく後れを取った自民党は同党大阪府連の立て直しと衆院選における候補者差し替えなどの検討に入った。参議院選補欠選挙に続き地方選でも敗北を喫した立憲は泉代表の責任を問う声が高まり、具体的な目標数字を掲げて衆院選に挑まざるを得ないところまで追い込まれた。 
 
◆カルト、ミニナチの影響は 
 
 選挙の見どころに一つは、東一教会の自民党への影響力がどう発揮されるのか、ということと、この地方選でかなりの候補者を擁立したミニ政党、参政党の行方。有機農業や食の安全、反ワクチンといったソフトな顔を表に出しながら、排外主義や天皇中心主義を綱領に掲げたこの党を弱小泡沫と切り捨てるわけにはいかないからだ。 
 
 統一教会についてみると、 朝日新聞が行ったアンケートで「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との接点を認めた都道府県議について、4月の東一地方選での当選、落選を調べたところ、立候補した228人のうち9割にあたる206人が当選していた。落選は1割にあたる22人だった。 得票数では、半数超が前回より減らしていたものの、あれほど問題になりながら9割当選という空恐ろしい結果が出た。 
 参政党はどうだったか。参政党は全国で231人の候補者を擁立し、100人が当選した。これは、参政党が結党した2021年9月以来初めての地方選での結果であり、注目される。参政党の支持層は、若者や女性が多いことが特徴で、各地のオーガニック学校給食実現では、いつの間にか運動に中心に座っている。それだけ草の根の運動に紛れ込んでいるといえる。今回の選挙では、地方議会で議席を獲得した市町村は47都道府県のうち36県にのぼった。 
 
◆革新政党の退潮 
 
 日本共産党は全国で1,014人の候補者を擁立し、511人が当選した。これは、過去最高の議席数を獲得しました前回2019年の統一地方選挙から13議席減となった。党員の高齢化に悩む共産党は、今回はやや後退したが、依然として地方議会で最大の野党であり、大きな影響力を持っている。 
 社民党は全国で101人の候補者を擁立し、25人が当選、前回の統一地方選挙から4議席減となった。新社会党は全国で11人の候補者を擁立し、1人が当選した。両党は共産党とともに「野党共闘」を展開し、多くの候補者を擁立したが、大きな成果を挙げることができなかった。しかし老舗の革新政党として地方議会で一定の影響力を持っている。今後の野党共闘に期待したい。 
 
◆女性の活動 
 
 今回の統一地方選挙では、女性の市町村議会議員の当選者が過去最多となり、全国の市町村議会議員の女性比率は16.1%で、前回選挙から1.1ポイント増加した。この動きはこれからの地方政治にあり方に影響を与えることは確実だ。男性議員とは異なる視点から議論を提起することで、地方自治に変化を促していく可能性がある。 
女性進出で注目されるのは東京・杉並区議選の結果。候補69人が48議席を争い、女性議員が改選前の15人から25人に増えた。投票率も上がり、43・66%で前回より4・19ポイント上昇した。 
 
 党派別では、自民が現職7人落選、公明と合わせて議席数が22から15に減り、その一方で立憲が4から6に、共産は6を維持した。杉並は今の岸本聡子区長を押し出した選挙で、女性を中心とする草の根の運動を堀起こし、さらに今回の区議選挙で政治状況を一変させた。岸本区長は政策合意を結んだ候補19人を支援。そのうち15人が女性で、新顔7人を含む11人が当選した。全国的には投票率はますます下がり、特に若者の選挙離れが加速する中で、杉並選挙は唯一この先の希望を感じさせる結果を生んだ。 


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