2023年07月15日15時03分掲載  無料記事
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国際

アメリカの景気後退 過去10年間で最大の倒産ペース レイオフも進む

  最近、グーグルが12000人を世界でレイオフ(一時解雇)する計画に対して、雇用された労働者が各地でストライキを起こしていることをニュースで知りました。グーグルと言えば、パソコンを使えば毎日接しているものですが、その足元で労働者たちが闘争をしています。以下は4月上旬のロイターの記事で、ロンドンでのストライキを紹介したものです。労働者が「being evil (不道徳であること)はストラテジーではない」というプラカードを手にしています。しかも、彼はフランスの「黄色いベスト」と同じジャケットを着ています。以下のロイターの記事によると、米国のレイオフの波を大きくかぶっているのがテクノロジー(IT)の分野で、今年に入って4月上旬現在で29万人にも及ぶというデータを紹介しています。 
https://www.reuters.com/technology/google-workers-london-stage-walkout-over-job-cuts-2023-04-04/ 
  このレイオフの原因は、以下のニューヨークタイムズによると、コロナからの経済の復旧が予想以上に遅かったこと、連邦準備制度理事会の政策金利の引き上げペースの速さ、さらにインフレが絡まって企業を直撃しているとのこと。ニューヨークタイムズによれば、これまで何とか持ちこたえてきた企業群がついに持ちこたえられなくなってきた、そしてレイオフしても倒産・・・という事態に突入したようです。この記事のタイトルは「Corporate America Faces a Bankruptcy Boom 〜New data shows that 2023 is shaping up to be the biggest year for Chapter 11 filings in more than a decade〜」(アメリカ株式会社は倒産ブームに入る〜最新データは2023年は10年ぶりに(チャプター11を申請する)倒産企業のラッシュになろうとしている)。 
https://www.nytimes.com/2023/05/18/business/dealbook/corporate-bankruptcies-high-debt.html 
  ニューヨークタイムズは6月14日に、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が今回は金利引き上げはしない、と語った後に、金利に関する記事を出しています。 
「Fed Leaves Rates Steady but Forecasts More Moves 〜Central bankers have raised rates at the fastest pace since the 1980s, but now they’re taking time to survey how the changes are working〜」(連邦準備銀行=FED=は金利を動かさなかったが、さらに金利上げの可能性が何度かある〜中央銀行(FED)は1980年代以後、最高に早いペースで政策金利を上げている。しかし、その利上げがどのくらい効いているかを測定するのに時間がかかっている) 
https://www.nytimes.com/2023/06/14/business/what-to-know-about-the-feds-meeting-today.html 
  私の記憶では2021年1月にバイデン大統領が執務を始めてすぐにインフレに見舞われていた時、パウエル議長は、これはコロナ禍から回復基調に起こる調整インフレに過ぎないのでいずれ鎮静化する、と説明していました。コロナで需要が縮小していたところに、需要が大きく回復しても供給が追いつかないため、物価が上がっているのだという説明でした。しかし、すでに2023年になってもインフレが制御できていないために、まだ利上げをする予定だとされます。コロナ禍のほぼゼロの金利から現在は5%〜5.25%のレンジに長期金利を誘導しようとしています。ですからFEDが政策金利の利上げに踏み切った2022年3月から、わずか1年ほどでほぼ5%も金利が上がったら、低金利で計画をした商業プロジェクトは軒並み激しい苦境になるのも無理からぬところです。しかも、記事によると上昇の激しい食品と燃料をのぞいても年末のインフレ率は3.9%と予想以上にまだ高い値になりそうだとのこと。 
 
  さらなる深刻な波及も懸念されます。それは金融業界への波及です。すでに 
 
*ブルームバーグ「米銀、預金流出食い止めで金利引き上げ強いられる−業績圧迫も」(2023年3月) 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-06/RR3M33T0AFBT01 
「銀行は預金流出を食い止めようと、金利を最低水準からようやく引き上げ始めている。特に譲渡性預金(CD)の利率だ。今や1年前後のCDで5%の年間利回りを提供している米銀はキャピタル・ワン・ファイナンシャルなど10行余りに上る。同利率は2年前であれば、とてつもなく高い水準だった。大手銀行ですらも焦りを覚えており、ウェルズ・ファーゴの11カ月物CDは4%の利子が付く。CDなど銀行預金の金利急上昇は消費者や企業にとって追い風となっているが、融資減速や評価損拡大に備えている米銀行業界にとってはコストがかかる展開だと、バークレイズのアナリスト、ジェーソン・ゴールドバーグ氏は指摘する。比較的小規模な地域銀行にとって、預金流出は深刻な問題となり収益性に大きく影響する可能性もある。」 


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