2023年08月03日15時27分掲載  無料記事
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核・原子力

原発回帰を指摘 反原発団体がシンポジウムを開催

 福島原発事故が起きてから12年、未だに廃炉作業が収束する見通しの立たない中、岸田政権は「脱炭素社会の実現」を目的として原発推進に舵を切った。また、隣国の韓国でもこれと同様に原発推進の動きがあり、尹政権は原発の増設や稼働期間の延長を検討している。 
 
 こうした日韓両政府の原発回帰に向けた動きを受けて、超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」及びNPO法人・原子力資料情報室は、7月31日、韓国から有識者や野党国会議員を招き、衆議院第一議員会館において「原子力と核・私たちは管理できるのか」と題するシンポジウムを開催した(協力:ウェブサイト核情報及び原子力市民委員会)。 
 
 同シンポジウムに出席した「れいわ新選組」の櫛渕万里衆議院議員は、今年5月に韓国で行った「北東アジアの非核兵器地帯構想」の議論を踏まえ、「核に頼らない安全保障を実現している地域もある」とし、日韓両政府が原発を推進している現状を批判した。また、「原発ゼロの会」事務局長を務める立憲民主党の阿部知子衆議院議員は、「国民は原子力による発電と核兵器を全くの別物と認識してしまっている」として、原子力発電が核兵器に転用される危険性を訴えた。 
 
 韓国からは、元韓国原子力安全委員会委員長の姜政敏(カン・ジョンミン)氏と正義党の姜恩美(カン・ウンミ)議員が発言。姜政敏氏は、「韓国では政権が代わってから原発政策が進められ、尹大統領は対北朝鮮を視野に入れて戦術核の保有についても言及している」と、文政権時代と比較しながら、原発回帰が進む現状を危惧した。また、姜恩美議員は、日本政府が計画するアルプス処理水の海洋放出に触れ、「韓国政府は事実上アルプス処理水の放出に同意しているが、日韓両国において放出に反対する人々も多くいる。世界の海を守るためにも両国民が力を合わせて放出反対を訴えることが大切だ」と主張した。 
 
 同シンポジウムでは、NPO法人・原子力資料情報室の松久保肇事務局長と元原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏によるディスカッションも行われ、脱炭酸社会の実現を口実とした現状の原発回帰政策を批判すると共に核問題のリスクを指摘した。 
 
 現在、ロシアがウクライナのザポリージャ原発を占領していることからも分かるように、原発は人々に脅威を与えるものにもなり得る。また、日本政府が進める原発の廃炉作業に関しては、処理水の海洋放出をめぐって環境汚染の観点からも国内外から批判の声が上がっている。 
 
 「脱炭素社会を実現するための原発推進」と言えば聞こえはいいが、これらの現状を勘案すると、原発は決してクリーンなエネルギー源とは言い切れない。政府には、原発回帰ではなく、「原発に頼らない脱炭素社会の実現」を模索することが求められる。 


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