2023年08月22日15時42分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202308221542242

環境

福島の核汚染水放出に関するNYTの報道 東京電力のウェブサイトによると「約47万3千トンのタンクの水のうち、完全に処理されたのは30%」

  24日にも福島の核汚染水の放流が迫っているとされ、世界でも大きく報道されています。この汚染水は一応、放射能除去の処理を受けたとされ、残るのは微量のトリチウムだけ、と喧伝されていますが、ニューヨークタイムズは、そこまで処理されたのは30%だと報じました。この出典は東京電力のウェブサイトにそう書かれているとされます。 
https://www.nytimes.com/2023/08/21/world/asia/japan-fukushima-water-release.html 
 「Still, some scientists have questions. According to Tepco’s website, just 30 percent of the approximately 473,000 tons of water in the tanks have been fully treated to the point that only tritium remains.」(ニューヨークタイムズより) 
 
  ニューヨークタイムズが出典として記事に付しているのは以下の東京電力の英文による説明です。 
https://www.tepco.co.jp/en/decommission/progress/watertreatment/alps01/index-e.html#amount 
 「ALPS treated water      Approx.30%」 
 「Water to be re-purified    Approx 70%」 
 確かに今年の8月3日付で、そう記されています。東京電力は用語の説明をこう付しています。 
 
 「Water that has been purified with multi-nuclide removal equipment (ALPS), but for which the concentrations of radioactive materials do not meet regulatory standards for safety (sum of ratios of legally required concentrations, excluding tritium, is 1 or higher) shall be referred to as, "Treated water to be re-purified."」 
 
 「ALPSで浄化されたものの、放射線物質の凝縮状況が安全の規制数値をクリアできていないものは、Treated water to be re-purified(処理されたが、まだ浄化の必要な水)と記しています」 
 
  すなわち、まだ処理が完全に終わっていない水が70%も存在すると読めるのです。 
 
  ニューヨークタイムズでは、科学者の引用をつけて、トリチウムはともかく、もっと有毒なセシウムやコバルトが本当に除去されているのか疑問符を突きつけています。 
 
  東京電力は段階に分けて放水するとしていますが、まだ処理の必要な汚染水については今後、再度浄化して、完全にトリチウムだけにしたことを確認したうえで太平洋に放水する、ということを確約しなくては外国のメディアのこうした批判をかわすことは不可能でしょう。 
 
 これはドイツのグローガー理恵さんが紹介したIPPNW(核戦争防止国際医師会議)の声明とも響きあう内容です。そこでも、こう記されていました。 
 「放射性汚染物質の大部分を除去するために設計された多核種除去設備ALPS (Advanced Liquid Processing System) による処理プロセスを経たタンクの70%以上が、再処理を必要としている。中には、処理後のレベルが排出規制値の19,900倍 高い同位体もある。ALPSによる処理プロセスを繰り返しても、いつも一貫して効果的な浄化ができるということを確認するような証拠はない。」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202308220050062 
 
 *東京電力のプレスリリース「多核種除去設備等処理水の海洋放出にあたって」 
https://www.tepco.co.jp/press/release/2023/pdf3/230822j0101.pdf 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。