2023年08月22日21時31分掲載  無料記事
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アジア

「タクシン元首相帰国後のタイ」��15年の国外亡命に終止符 保守大連合の出発 宇崎真

 8月22日はタイ現代史のなかでどのような意味をもつだろうか。タクシンはこの15年間のドバイ、香港などでの亡命生活中に20回「帰国」を表明しながらその都度キャンセル、あるいは延期してきた。そして今日まさに国会で首班指名選挙でタイ貢献党のセター候補が首相に選出されるかという数時間前にタイの土を踏み支持者らの歓迎に応えた。 
 多数の報道陣のフラッシュを通り過ぎ、一旦表に出てまず国王夫妻の肖像画の前で一礼し花を手向け跪き手を合わせ約3秒間頭を垂れて敬意を表した。この表敬儀式がまずタイ当局から提案したものなのか、それともタクシンからの提案だったのか、それはわからない。だが、どちらであっても今回の帰国が意味するものを象徴している。 
 前回(2008)短期間タクシンが帰国したのは最高裁での汚職容疑審理にあたって意見陳述のためであった。そのときは入国後真っ先に膝を折り大地にくちづけした。それは母国愛の表現であり、民衆へのメッセージであっただろう。 
 この二つのシーンの差異が印象に残る。 
 
 タクシンは然るべき場所、然るべき自己の安寧の地に帰ってきた。タイの現代史に激動の政治をもたらした奇才の役割は終わった。「反軍、民主主義、貧しい庶民のリーダー」というイメージはタクシンのポピュリズムがもたらしたその時代の選択であり、現時点では全く別の選択をしたということなのだろう。 
 
 タイ人は論理、理屈、理論よりも情緒、心の動きによって動く。この特徴はアジアのなかでも際立っているのではないか。そして「敵」を徹底的に追い詰めることはしない。力関係の流れを読みそのなかで柔軟に対応していく。これらの特性ともいうべき国民性が各国列強の支配をかわし植民地とならず独立を保持してきた。これがタイ国と国民の誇りでありアイデンティティーの源泉である。そして加えるなら王制の歴史こそがタイのタイたる所以であると生まれて以来学校で家庭でお寺で教えられてきた。その国土にタクシンが帰ってきて国王に忠誠を誓ったのだ、と圧倒的国民は感じとり理解する、 
 だからタクシンの帰国は「政治」というよりも「文化」と見た方がいいだろう。タクシン賛美の声はかつての支持層のなかでも熱気は低下し、だが反対の声も盛り上がらないだろう。粛々と政治は進む。同日午後タイ国会は貢献党のセター不動産富豪を対立候補なし、482の賛成票(727票中)で首相に選出した。タイ保守大連合の出発である。                   (つづく) 


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