2023年09月18日16時08分掲載  無料記事
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久邇良子著『フランスの地方制度改革〜ミッテラン政権の試み〜』(早稲田大学出版)

  フランスの現代政治をウォッチする時、最も困惑するものの1つにコミューンとか、地域圏といった自治体に関する概念が日本の市町村や県とどう違っているのか、ということがあります。コミューンと言えば、なんだか革命っぽい響きがありますが、フランスの政治制度でコミューンは市町村を指します。日本ではサイズの異なる市町村が同じ単語で表されている点もなかなかわかりづらい点です。本書の出版時点でフランス国内にコミューンは約36000も存在していました。これがまた「えっ?」と思ってしまう点です。さらに県のほかに地域圏というのも存在します。 
 
  久邇良子著『フランスの地方制度改革』(早稲田大学出版)は2004年に初版が出ていますが、このフランス独自の地方政治制度について実によくわかる書で、非常に参考になります。フランスでは1789年の大革命のときに中央集権制度をジャコバン党議員たちが議決した結果、中央集権制度が伝統的に強かったのですが、これを近年、地方分権化する改革が右左を越えて何度も試みられてきました。そして、欧州連合へと統合されるプロセスが、地方分権化と関連していたこともわかります。そういう点で、なかなか日本からわかりにくいところがしっかりと書き込まれていて、とてもありがたい1冊だと思います。副題に、ミッテラン政権の試み、とありますが、説明されているのはミッテラン政権だけでなく、ドゴール政権時代も含め、歴史的にかなり広範に説明されている点も初学者にとってはありがたい点です。もう一点、追加すると、住民投票制度と公職兼任制度の解説も興味深く読ませていただきました。 
 
 
 
 
■大山礼子著 「フランスの政治制度」(東信堂)   49−3とは何か 
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■モンテスキュー著「法の精神」 〜「権力分立」は日本でなぜ実現できないか〜 
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■「現代政治学の基礎知識」(有斐閣) 〜政治の再構築に向けて〜 
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■ヒューム著「人性論」 ‘A treatise on Human Nature’ ヒュームは面白いが本気でやると難しい。でもヒュームを読んでおくとカントが楽になる 
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