2023年10月05日13時33分掲載  無料記事
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コラム

菜食だった時代もあるワニ

ワニと言えば、狂暴な肉食動物というイメージですが、最近、それとは違った記事や動画をいくつか見ることがありました。たとえばワニにはエンパシー(共感力、empathy)がある、というものや、かつては菜食だった、というものなどです。後者は2019年のニューヨークタイムズの記事*にも科学者の説として紹介されているんです。「Crocodiles Went Through a Vegetarian Phase, Too」(ワニもヴェジェタリアンだった時期があった」というタイトルで、少なくとも3回あったという説です。その説の根拠は古代のワニの化石の歯から推定しているとのこと。 
 
  人間は肉も植物も食べるので歯の形も双方に適して並んでいますが、植物をすりつぶすための臼歯が奥に並んでいます。研究者によると、この臼歯を持つワニがかつて存在していたようなのです。一説によると古代のある種のワニは菜食主義、ある種のワニは肉食だけ、ある種のワニはどちらも食べる、というようなバリエーションがあり、生息地も陸上に住むものから河川だけに住むものまで多様だったとのこと。 
 
*ニューヨークタイムズの記事 
https://www.nytimes.com/2019/06/27/science/crocodiles-vegetarian-teeth.html 
  草食動物になったり、肉食動物になったりするには、体内に取り入れた食べ物をどう分解してエネルギーにし、どうタンパク質にして新陳代謝に用いるかという生化学的な分析も必要でしょうが、私にはその知識がありません。ただ、私の個人的な想像に過ぎませんが〜ニューヨークタイムズの先述の記事にもちらりとヒントがあるのですが〜草食動物だった時代にワニにとって、哺乳類との競争に勝てなかった可能性が大きいのではないかと感じます。 
 
  ワニは手足が短く、川にいないときは、常に大地を這うように移動するしかありません。もちろん、瞬間的に走ることはできるのですが、長く走り続ける能力は馬やウサギなどと比べると比較にならないでしょう。つまり、ワニにとって草食時代に身の回りの草を食べつくしてしまった時、他の場所へ移動する必要があるのですが、馬と比べると格段に移動能力は乏しいです。そのために、常に飢餓と隣り合わせになるリスクがあったのではないかと思います。 
 
  SNS時代になって私にとって視聴する動画で圧倒的に多くなったのがアフリカの野生動物たちの闘争のシーンです。とにかくメスライオンたちがシマウマや時にはゾウの首筋に食いついて背中に乗りかかり、必死で倒そうとし、襲われた動物たちは必死で振り払って逃げようとし、あるいは牙でライオンを攻撃したりします。百獣の王などと呼ばれるライオンですが、肉食動物は食事をするために毎回のようにしばしば死闘を繰り広げているのです。時には逆襲されて牙が足に突き刺さり、死んでしまうメスライオンもいます。川辺ではチーターとワニが互いに相手を倒して食おうとしのぎを削っています。ワニは川の中にいると百獣の王みたいですが、陸に上がるとライオンに首筋を咬まれて襲われるケースがあるようです。こうしたこともワニが大地で菜食動物になれなかった要素かなと想像されます。 
 
  こうした動画を見ていると、草や木の実があればすぐに食事にかかれる草食動物、菜食動物は空腹を満たすための敷居がとても低いことがわかります。「腹が減った〜」というところから、満たされるところまでにやるべきことが〜周囲に植物が潤沢にあれば〜肉食動物ほど多くはないのです。こういう風に見ると、ワニが草食動物に化した動機も理解できる気がします。しかし、少なくとも3回、ベジェタリアンになったのに持続できなかったとしたら悲劇ではないでしょうか。まあ、これは科学者ではない私の単なる推測に過ぎません。 


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