2023年10月28日13時58分掲載  無料記事
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アジア

韓国で政権による労組弾圧、言論弾圧が横行  安田幸弘

韓国の政権が、「『既得権勢力』を懲らしめてやる」とばかりに、労組弾圧やら言論弾圧やらが横行してる。政府の政策に反対するから労組は反政府既得権勢力、政府の政策を批判するからマスコミは反政府既得権勢力、だから弾圧してやると韓国政府は言う。 
 
なんだか安倍が「あんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫んでみせたことを思い出したりもするけど、さすがの安倍政権も、尹錫悦ほどの無法はやらなかったし、やれなかった。 
 
日本の労組弾圧・言論弾圧のやり方は、真綿で首を絞めるように長い時間をかけてじわじわと力を奪うけど、韓国のやり方は露骨だ。 
労組の弾圧は、それでも盧武鉉だの文在寅だのもやっていたけれど、民主主義の根幹たる言論の自由を封殺するような言論弾圧は過去の軍事独裁政権の復活だ。 
 
最近、たとえば政府に批判的な番組があるといって公営放送のKBSを弾圧するやり方は、番組にいちいち注文を出し、社長を交代させて、受信料の徴収方法を変える。朴槿恵の時代に大規模なストを打ったMBCは民営化の危機にある。同じく準公営放送のYTNは社長や理事を交代して株の売却を議決させ、経営権を完全に民間に渡すという形。ソウル市が運営していたTBSの場合は運営費の支払いをやめたおかげで放送局は存続の瀬戸際。 
 
本来、放送でもないYouTubeのチャンネルにまでいちゃもんをつけ、放送審議会にかけるという離れ業をやってみせた。そして政府を批判する記事を書いた記者に名誉毀損だかなんだかで訴訟をかけて、記者個人の自宅をガサ入れするという前代未聞の弾圧をかけている。そのうち投獄される記者も出てくるだろう。 
 
さすがにまともなジャーナリストは強く反発しているけれど、上層部の決定で政府を批判する番組や記事が出せなくなりつつある。KBSの記者で朝の時事番組のアンカーをしているチェギョンヨンは、「こんなのやってられん」とばかりに今朝の番組で放送から降板してKBSもやめると言ってた。チェギョンヨンの番組は好きで毎日聞いてたんだけど、これからどうすればいいんだ? 
 
尹錫悦政権の任期はまだ3年以上残ってる。来年の国政選挙で与党を大敗させて早期レームダックに追い込むしかないのだが、困ったことに野党がだらしない。本当なら政権の労組や言論の弾圧に野党が先頭に立って政権を批判しなきゃいけないのに、最大議席を持つトブロ民主は李在明の司法リスクのおかげで党内抗争に明け暮れている。選挙で議席を取っても全然期待できない。 
 
かといって、トブロ民主の代わりになるような第3の勢力もない。一応、国会には正義党という進歩政党があるのだけど、これがトブロ民主のコバンザメみたいな政党で、人気もなければ力もない。 
 
そうなると、頼りになるのは韓国民衆のパワーなんだけど、まあ、李在明のファンダムが毎週それなりの規模の集会を開いてはいるものの、朴槿恵弾劾のときのような広がりもパワーもない。 
まあ、韓国がどうなろうが日本人が知ったことじゃないとは言うものの、韓国の知り合いが心配。 
 
(やすだ・ゆきひろ ジャーナリスト) 


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