2023年11月22日18時11分掲載
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アジア
ミャンマーが抱える「ロヒンギャ問題」−迫害や差別を止めるには−〈後編〉 熊澤 新
一種の「差別感情」を含んだロヒンギャについての意識は、私がミャンマーの民主化に関する活動に参加し始めてからなんとなく感じていた。それが、2012年6月以降に相次いで起こったロヒンギャとラカイン民族の衝突事件によって、より顕在化したと思う。
在日ミャンマー人と接点を持つ日本のNGO関係者や研究者の中でもそういった「在日ミャンマー人に対する違和感」を指摘している人が何人もいた。
本国の民主化活動を担う在日ミャンマー人のリーダーたちは、協力している私のような日本人に対して、「ミャンマー民主化への協力には感謝するが、ロヒンギャに関する見解は受け入れられない」と繰り返していた。
2017年のロヒンギャ虐殺事件が日本でも大きく報じられると、一方で反ロヒンギャ的主張もより露わになったといえるかもしれない。一例を挙げれば、同年の秋ごろに東京・青山の国連大学ビル前で行われたデモ、それに東京・渋谷のNHK放送センター前で行われた、報道番組の内容に対する抗議行動などである。
私は、国連大学ビル前のデモ(少なくとも100名以上が参加)には参加していないが、その直後に、デモを主催していたグループの一人から色々と情報をもらったのだ。このデモの目的は� 屮潺礇鵐沺執駝韻凌燭寮爾鯆阿院廰◆屮謄蹈螢好箸魯潺礇鵐沺爾�ら出ていけ」というもの。�,亮饂櫃蓮�国連や国際人権NGO、外国メディアは<ロヒンギャ側>の情報ばかり報じていて、問題の真実を伝えていないから不公平だ、というもの。彼らの言う真実とは「ロヒンギャは、不法に移住してきたバングラデシュ人なので、本来ならばミャンマーに居住する権利はない」、そして「メディアで報じられているような虐殺はなかった、あるいはそれほど深刻なものではなかった」ということだった。
また、�△亮饂櫃蓮�2017年の事件が武装組織であるARSA(アラカンロヒンギャ救済軍)による攻撃をきっかけとしているため、そのような武装組織(彼らの言うテロリスト)がミャンマー国内で活動することを許さない、という点だった。
2021年2月、ミャンマー国軍が軍事クーデタを起こし、再び強権的な政治体制となってから、在日ミャンマー人の民主化運動は新たな側面を迎えた。程なくして世代交代が起こり、民主化活動に参加する面々にも変化が生まれてきたわけだが、その中で、ロヒンギャ団体がデモや集会に招かれてスピーチしたりする場面も見られた。またロヒンギャではない在日ミャンマー人からも、「ロヒンギャを含めたミャンマー人が一緒になって民主化を実現しよう」という発言が何度か聞かれるようになった。
ただ、こうした出来事はまだまだ限定的なものであり、ロヒンギャ団体とその他のミャンマー人団体が連携して本国民主化のための活動を行っているとは言えないだろう。それは現時点(2023年11月)でもそうである。しかしそれでも、ミャンマー人たちの集会等にロヒンギャの人々が参加してスピーチするといった光景は一昔前なら「起こりえない」光景であった。
このような状況の中で、私は一つの試みを始めてみた。2022年末頃から、出会ったミャンマー人(正確にはミャマー出身で日本国籍を取得した者を含む)ひとりひとり(年齢は20歳台から60歳台)にロヒンギャについての見解を求めてみたわけだ(念のため、周囲に他の人がいない機会を選んで質問し、やり取りは日本語で行っている)。多数ではなく、ほんの25名ほどなのだが、「率直に言ってロヒンギャについてどう思いますか?」という質問をぶつけてみたわけだ。
そうすると、8割の方が「ロヒンギャはミャンマーに居住する権利はあると思う」、「ロヒンギャがミャンマー国内に定住しても構わないと思う」という回答だった。一方で「ロヒンギャにはミャンマー国民の地位を与えるべきだ」という回答は未だ半数に満たないので、微妙な差異が見られる。この聴き取りは現在も続けているので、今後回答の傾向も異なってくるかもしれない。
いずれにせよ、在日ミャンマー人の活動の中で見られる、ロヒンギャとの関わりの変化、そして在日ミャンマー人の中の考え方の変化、それは確かに、以前の状況を知る者にとっては信じられないといえる出来事だ。 しかしそれは、ロヒンギャと他民族が協力してミャンマーの民主化運動に勤しむ、あるいは両者が共に「多民族国家ミャンマー」を築いていく、という状況に向けた着実な変化であるとはまだまだ断言できない、と私は考える。
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熊澤 新(くまざわ・あらた)
・「ミャンマー民主化のためのネットワーク」代表
・行政書士(入管・ビザ関係の業務)
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