2023年12月14日19時18分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】COP28で「原発3倍増」宣言 (下) 世界を危機に陥れる宣言の内容  山崎久隆

 参加国の「確約」にはどのようなことが記載されているのだろうか。「原子力投資に革新的な資金調達メカニズムを含めて結集することを確約」と「原子力発電所が全ライフサイクルにわたって使用する安心・安全な技術のために、核燃料を含む強靭なサプライチェーンを推進」で、資金調達とサプライチェーンの維持に大きな問題があることが明らかになっている。 
 
4.ネックとなるのは資金とサプライチェーン 
 
 原子力開発には巨額の初期投資が必要であり、さらに運転を継続するには核燃料を含むサプライチェーンの維持にも費用がかかる。 
 それも、事故を起こさないように、高い技術的を有する企業グループがメンテをする必要がある。こうしたシステムを有していて他国に供給できるのは米国やフランスのような核兵器国だけだ。 
 
 結果、原発を導入する国は、資金的協力も技術の提供もメンテナンスも、加えて核燃料の供給も全て、原発供給国のコントロール下に置かれる。 
 原子力植民地体制に組み込まれていくことになる。自由と民主主義の対極にエネルギー政策が置かれるのだ。 
 
5.老朽炉の延命が特記される異常さ 
 
 「技術的に実行可能かつ経済的に効率的である場合には、安全性、持続可能性、セキュリティ及び不拡散の最も高い基準に沿って運転される原子力発電所の寿命を適切に延長することの重要性を認識」と、わざわざ老朽原発の延命が主要な課題として記載されている。 
 老朽原発は潜在的危険性が高く、安定的な運転もできない場合が多い。福島第一原発事故の教訓もそこにあり、旧ソ連製原発の安全性が国際問題になったことを忘れたのか。 
 
 チェルノブイリ原発事故について「あればソ連の原発だから」という昔の安全神話の復活だ。 
 そんな原発が世界中で多数稼働していたら、確率的に重大事故を起こす可能性も高まる。 
 必ずしも安全に投資し続ける国ばかりではないのに、老朽炉を無理矢理動かさなければならない事情は、新規原発の建設に巨額の費用がかかることも影響している。 
 日本であったように、一定年限に一定数の原発を動かすには、老朽炉に頼らざるを得ないということだ。 
 本末転倒と言うべきことである。 
 
6.地震や津波に加え、近年は洪水や旱魃 
 
 原発の「最大の脅威」自然災害は、日本では地震と津波と火山だが、世界では洪水や旱魃もまた、原発を危険にさらしている。 
 日本の地震などよりも発生頻度が高く、連続して襲いかかるという特徴もある。 
 
 旱魃の影響では、2022年のフランスを特記すべきだ。「猛暑で原子炉を冷やせない事件」が発生したのは7月。 
 ローヌ川とその支流で原発の約4分の1の冷却水を賄っている。旱魃と猛暑の影響で、ローヌ川の温度が上昇、原発が止まった。 
 
 原発は取り込んだ水で原子炉の熱を捨てるが、発電に寄与する熱量の倍を捨てている。原子炉の原理的制約だ。 
 川の水は海ほど豊富でもないため、水温が高いと下流が高温になりすぎ、川の生態系を破壊する。それを防ぐには停止するしかない。同時に旱魃で水がなくなれば冷却水喪失にもなりかねない。 
 
 フランスの原発はこの時期、発電量が半減してしまった。同じことは米国のテネシー川、そして沿岸部でさえ起きている。 
 これに加えて洪水が追い打ちをかけている。 
 2011年6月の米国、ミズーリ川沿いに建つフォート・カルフーン原発の敷地内は茶色く濁った水に覆われ、今にも建屋が浸水しそうに見えた。 
 
 福島第一原発事故が起きて3ヶ月、米国でもあわや全電源喪失からメルトダウンする恐れがあった。こうした洪水は近年増えている。「温暖化対策で原発」は、「気候変動対策」としても成立しなくなったのである。 
 
(たんぽぽ舎共同代表) 


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