2024年04月02日08時26分掲載  無料記事
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欧州

教育大臣、イタリア語文法を間違える!〜チャオ!イタリア通信(サトウノリコ)

 今年の3月30日、イタリアはパスクワと呼ばれる復活祭の日です。イタリアの学校は、このパスクワの前後1週間が短いバカンスとなります。パスクワは、クリスマスに次いでキリスト教では大切な日になります。 
 
 このパスクワ前日にジュゼッペ・ヴァルディターラ教育・功績大臣をめぐって論争が起こりました。事の発端は、ミラノ県にあるピオルテッロという人口約3万6千人の町の「イクバル・マシー」総合学校(小中学校があり、約1300人の生徒が在籍する)が、ラマダーンのために学校を休校するという決定をしたことです。町の教育委員会や学校の教師たちによって行われた、この決定は政治的な論争をも呼び起こしました。イタリアでは、学校がラマダーンのために休校になるのは、初めてということだそうです。イスラム教徒の人たちが多いコミュニティなんですね。で、この決定には中道右派が、イタリア人のアイデンティティーが脅かされていると反論。これは、「同盟」やファシストの系統を受け継ぐ「イタリアの同胞」、これらの政党が移民追放を叫ぶ時の決まり文句ではありますが。町の人たちの間でも、この決定に賛成する人、反対する人と意見が分かれました。 
 
 もちろん、ヴァルディターラ教育・功績大臣もこの決定に疑問を持っているという内容のツイートをしました。そしたら、この論争に終止符を打つように、イタリア大統領マッタレッラ氏が「この決定を支持する」とのツイートが出たんですが、そこに「同盟」のリーダー、サルヴィーニ氏が「一クラスに20%の外国人生徒という上限を設けるべきだ」というツイート。これもイタリアの現実が見えていない意見なんですけど。このサルヴィーニ氏のツイートに追随するようにヴァルディターラ大臣もツイートをしたんですが、そこでイタリア語の文法を間違えて書いていて、それがまた別の論争を呼び起こしてしまったんです。 
 
 私もイタリア語をそれなりに一通り勉強しましたが、動詞の変化がたくさんあって覚えるのが、本当大変です。イタリア人だって、完璧に動詞の変化を言える人はあまりいないというのが、イタリア人の間でも共通認識。ただ、教育大臣をやっている人が、文法を間違えてしまうというのが・・・。しかも、その間違いを指摘されたら、ツイートは別の人が書いていて、電話で自分が話したことを書いたから、自分のせいじゃないみたいな言い訳ツイートしてるんです。それもどうかなって感じですよね。人のせいにする・・・。大人げないな・・・。 
 
 とにかく、この問題は現実を見ない中道右派の意見が大元にあるんですが、例えば、私の子どもが行く学校も外国人が多いですよ。息子のクラスは、3分の1弱が中国系の生徒で、両親はイタリア語話せないとか、私みたいに母親が外国人の生徒は、また3分の1弱いるので、クラスの半分ぐらいはイタリア文化ではない文化を背景に持っている生徒です。また、フィレンツェの学校は、クラスの半分以上が外国人生徒だったり、母親か父親が外国人とか、よく聞きます。それを昔のヒットラーみたいに、「純粋なイタリア人のアイデンティティーが脅かされる」みたいなこと言っている時代遅れが右派の意見なんですが、それに踊らされる人たちもいるんですよね、実際。そこが問題。 
 
 私からしたら、ヨーロッパ人って歴史的にも色んな国が色々混ざっているじゃないですか。古くはローマ帝国がイギリスやトルコまで進出していったり、ヨーロッパにアフリカ系やトルコ系が入ってきたり・・・スペインのハブスブルク家はオランダとかベルギーまで進出したり・・・私みたいな島国の人間からしたら、ヨーロッパはもう皆一緒。おおざっぱかもしれないけど、ぐちゃぐちゃ交じり合ってて、どの国の人たちも元をたどれば色んな国の人たちの血が流れていそうな・・・。今更、純粋なイタリア人って言われてもねえ・・・。 
 
 それと、イタリアではイタリアで生まれ育っても外国人は外国人という規則があるので、滞在許可証やパスポートなどのドキュメントの問題もありますよね。 
「イタリアで生まれ、成年年齢(18歳)に達するまで中断することなくイタリアに合法的に居住していた外国人は、前述の日から1年以内にイタリア市民権を取得したいと宣言すれば市民権を得る」 
という規則があるそうで、18歳までは外国人として生きるということになるんですね。 


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