2025年05月23日22時54分掲載  無料記事
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入管

ウィシュマさんの遺族 収容中の全映像の開示を求め新たな訴訟を提起 「遺族には開示してもらう権利がある」

 2021年3月に名古屋出入国管理局内で亡くなったスリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんの遺族は20日、収容中のウィシュマさんの様子を記録した映像を入管側が全面開示しないのは違法だとして、東京地裁に開示を求める訴えを提起した。同日、遺族と弁護団は参議院議員会館で会見を開き、訴えの経緯を説明した。 
 
 ウィシュマさんは入管に収容中の21年3月、体調不良などを訴えた末に亡くなった。この翌年、遺族は名古屋入管がウィシュマさんに対する必要な医療提供を怠ったとして国に対して国家賠償請求訴訟を提起しており、その裁判の過程でウィシュマさんが死亡する2週間前からの様子を記録した295時間分の映像の開示を求めてきた。しかし、国側が開示に応じたのは、このうちの5時間分にとどまっている。 
 
 こうした中、遺族は今年2月、名古屋入管に対して個人情報保護法に基づく開示請求を行い、全ての映像の開示を求めたが、名古屋入管は3月26日付けで映像の一切を開示しない「全部不開示」の決定を下した。遺族は入管側が示した不開示理由は極めて不当だとして、現在係争中の国賠訴訟とは別に、この決定の取り消しと開示の義務付けを求める「第二の訴訟」を提起した。 
 
 名古屋入管は今回の不開示決定の理由について、映像の中に入管施設の警備・保安体制が記録されていることなどを挙げているが、これに対して弁護団の指宿昭一弁護士は会見で「映像の一部はすでに公開されているが、これによって入管施設で暴動や集団脱走といった公共の安全を害する事実が起きたことはない。入管側が示す不開示の理由はどれも理屈として通らないものであり、裁判所は速やかに我々の請求を認めるべきだ」と語気を強めた。 
 また、駒井知会弁護士は「入管は残りの290時間分の映像を抱え込んだまま闇に葬ろうとしている。二度と同じような死亡事件を起こさないためにも、映像は必ず遺族のもとに渡されるべきだ。この裁判は国の行政機関による誤った情報統制を正すためのものでもある。遺族と弁護団で力を合わせて必ず勝ちにいきたい」と裁判への決意を示した。 
 
 ウィシュマさんの妹のポールニマさんは「遺族には全ての映像を開示してもらう権利がある。収容中の姉がどのような生活を送っていたのか、少しでも元気な姿があったのか、自分の目で確認したい」と思いを語った。 
 
 残りの映像には今後の国賠訴訟の行方を左右する情報が記録されている可能性がある。「理屈が通らない」とする遺族側の主張に対し、国側はどのような対応を取るのか。今後の動向が注目される。 


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