2025年06月03日21時38分掲載  無料記事
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アジア

韓国民衆パワーと分断政治  大統領選挙後の「K-デモクラシー」の行方は

韓国の大統領選挙今夜にも大勢が決する。韓国の選挙らしく、波乱万丈の選挙戦だったけど、今回の波乱万丈はあまり面白くなかった。(安田幸弘) 
 
どっちみち李在明が勝つのがわかりきった選挙戦ということもあるけれど、両陣営とも相手を悪魔化することに躍起になるばかりで、政策論争みたいなものはほとんどなく、自分たちの陣営の内部で「内乱を審判せよ!」、「犯罪者を大統領にするな!」と盛り上がるばかり。 
いわゆる「K-デモクラシー」が抱える大衆扇動政治的な悪い面が吹き出したような選挙戦だったと思う。 
 
ただ、この選挙戦を通じて保守陣営が抱える矛盾がはっきりしたことで、今後、保守陣営がどう動くのかというあたりは興味津々。洪準杓を筆頭とする旧式の保守本流、尹錫悦を推す既得権保守あるいは「アスファルト保守」とも呼ばれる陰謀論者の群れ、劉承旼や安哲秀など今回は影が薄かった合理的保守、そして組織からは弾き飛ばされながらも一応保守陣営の一角をなす李俊錫一党といういくつかのグループが権力を求めて蠢いている。 
このあと、どのグループが党を掌握するかにもよるけど、今のままで行くと保守陣営は日本の維新みたいにPK/TKを中心とする地域政党的な勢力になりかねない。 
 
勝利が予想されるリベラル陣営は、政権を取った後が問題。圧倒的に優勢な議会とともに「司法改革」といえば聞こえはいいけどつまり司法の掌握を図ることになりそう。もしこの目論見が成功すれば三権をコントロール下に置き一種の独裁が可能になる。 
 
まあ、韓国の司法の問題もなかなか深刻なので、司法改革の必要性を否定するわけじゃないとは言うものの、司法リスクを抱える今のリベラル陣営にやらせていいのかという話。しかし今のリベラルだからこそメスを入れることができる部分があるのもまた事実。なかなか悩ましいね。 
 
韓国の民衆パワーはしょうもない体制をひっくり返す力を持っている。しかし今回の選挙では、この民衆パワーが分断され両陣営の親衛隊みたいな形で動員されることになったことに危機を感じる。 
二人の悪魔がいてはいけない。 


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