2025年07月03日14時56分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202507031456074

環境

気候変動問題について(再論):続き 温室効果の本当のこと 落合栄一郎

(1)温室効果(気候変動論者の説):気候変動論者の温室効果ガスCO2、CH4、H2O(水、無視される傾向)の主要点は、これらの分子が、地表から出てくる赤外線(熱線)を吸収し、一部は、外側に逃すが、半分ぐらいは地表方面に戻すので、地表からの熱線が失われずに、地表近辺に残るので、大気の温度が保持される。というわけで、これらの分子が大気中に増えれば、吸収して戻される熱線が増えるので、温暖化が起こる。大気の主成分(99%)は、窒素と酸素で、こうした分子は赤外線を吸収できないので、温室効果はなく、大気中にわずか(0.04%)しかないCO2(とその他の温室効果ガスも)で、大気の温度が保たれている。この意味では、空気中の水蒸気がCO2などより多くの効果があるが、これは通常無視されている。 
 
(2)以上の議論は、現実にある温室の中の空間を占める空気は、温室の効用になんらの関係がないということを示唆している。そうした議論では、温室の窓ガラスが赤外線を吸収する温室ガスと仮定されている。温室に窓ガラスを通して太陽光(赤外線でなく可視光線)が入って、壁や土壌などを温める。それから出る赤外線(熱線)を温室のガラス窓が吸収して、その窓ガラスから返却される熱で室内の温度が上がる。本当にそうでしょうか。壁や土壌から出る熱(熱線=赤外線)は、そこにある空気の分子の動きを速やかにする。気体の中の分子の動きが早くなると、その気体の温度は上がるのです。それは、水を温める時に見られる現象ですね。これで、温室内の空気の温度が上昇するわけです。そして、温められた空気は、外に出られないので、温室内の温度が上昇する。そうではないですか。温室効果は、単に室内の空気が温められ(空気内の分子の運動が激しくなる=温度上昇)るが、その熱が外に逃げられないということです。 
 
(3)問題は、大気には、温室のような囲いがないことです。そこで、気候変動側の論は、大気中の0.04%のCO2が地表を囲んで、温室の囲いのような役目をしていると仮定している。地球表面から出る赤外線は、波長でいうとかなり幅広いものですが、CO2が吸収する波長は、そのほんのわずかの部分のみです。温室効果ガスは、それぞれ、違うがいくつかの特定の波長の赤外線しか吸収できません。地球表面からから出る幅広い赤外線のわずかな部分しか吸収しないので、それ以外の広い赤外線(熱線)は、吸収されることなく、宇宙に逃げていってしまいます。温室の囲いのような役目はできていません。 
 
(4)(2)でも議論したことですが、大気はどう関係しているのでしょうか。地表から熱線が出てきて、空気の中に沢山ある窒素や酸素分子を激しく動かします。そしてその部分は、温度が上昇します。しかし、囲いがないので、熱をもった分子は、上に移動します。地表からの熱は引き続き出てきて、窒素、酸素分子を動かし続け、その部分の温度をあげようとし続けます。しかし、そうして温まった分子は、上の方へ移動し続けます。とすると、下からの熱と上へ逃げる熱が拮抗して、その部分は、いずれは温度が定常化します。それが、大気による温室効果というべきものでしょう。 
 こうした現象を実験で確かめた科学者がいます。スイスのトマス・アルメンデインガー博士です[1]。筒に別々に、空気、炭酸ガス (CO2)、アルゴン、ネオン、ヘリウムなどを1気圧で入れておいて、熱線(赤外線)を下から照射し続ける。そして一定のところに温度計を設置して、それが観測する温度が定常値になるまで記録。この定常値は、炭酸ガスとアルゴンで、ほとんど同じ(炭酸ガスがほんのちょっと高い)、空気ではそれよりちょっと低い値。それから、ネオン、ヘリウムの順であった。炭酸ガス以外は、赤外線を吸収しない。アルゴンと炭酸ガスがほとんど同じということは、こうした温度は、赤外線を吸収するか否かとは無関係。他の性格が、こうした定常値を決めている。それは、何か。こうした分子の重さである。分子の重さは、分子量として表現されるが、炭酸ガスでは44 g/mol、アルゴン40g/mol、空気28.8g.mol (窒素、酸素の平均値)、 ネオン20.2g/mol、ヘリウム4.0g/mol。この結果は、定常値は、分子の重さによって決まり、赤外線吸収とは無関係を意味する。すなわち、大気の温度は、それに含まれる分子の重さにより決まる。分子が重いほど、それを動かすには大きいエネルギー(熱)が必要で、熱せられて逃げていく速度も遅い。だから、高い温度で定常値になる。反対に、軽い分子は、低い温度で運動が激しくなり、また逃げていく速度も速い。というわけで、低い温度で定常値になる。 
 この定常値になるというのが、囲いのない場合の温室効果(温度を保持する)。これとは別な方法で、こうした現象を検討した科学者は、これを「大気温室効果 (Atmospheric Greenhouse Effect)」と称している [2]。現実の大気で、地表近くの大気の温度を保持しているのが、この現象で、赤外線吸収による寄与もないわけではないが、その影響は、ほとんど無視できる程度である。すなわち、赤外線を吸収するCO2が増えることが、温度を上昇させるという論は、基本的に間違っている。 
 ところが、CO2温室効果温暖化が実現されているとみられる現象が、金星大気の温度である。金星の大気はCO2で出来ていて、温度は740K (4670C)と非常に高い。ほらみたことか、CO2の(赤外線吸収の)温室効果で、こんなに高い温度になっているのだよ、と気候変動論者は主張している。 
 現在の地球の地表の大気の温度は、全地球で平均化すると現在は150Cぐらいである。これが確かに前節の温室効果によるものかどうか、すなわちこの温度は、大気の重さに依存するのかどうか、確かめる必要がある。気体の温度、圧力、そして気体分子の重さの間にどんな関係があるか。それは、高校でも習う気体の関係式 pV=nRT(p=圧力、V=体積、n=分子の量(モル単位)、T=温度、R=気体定数)である。現在の地球表層にこの式を当てて温度Tを計算してみると、T=288.14K=15.140Cとなる [3]。すなわち、表層の大気の温度は、この式が意味すること(圧力、体積、温度間の関係は、その気体の分子の重さに依存する)、すなわち気体分子の重さで決まっている。そこで、金星の大気について、観測値(大気の比重)を用いて、こうした計算をしてみると、T=738.7Kとほとんど観測値に合致する [3]。すなわち、金星の大気はCO2だが、その温度は、赤外線の吸収力によって決まるのではなく、単にCO2が重い気体であるからによる。もちろん、基本的には、太陽からの距離が小さく、太陽光の影響で、そうした高温が生まれるのだが、それに基づく大気(金星表面)の温度がそうした高温になっているのは、CO2がその熱の発散を抑えている。赤外線吸収ではなく、CO2分子が、非常に早く動いているから。なおこうした議論に必要なデータとか図表を含めた論(英文ですが)は、私どものブログ[4]をご覧ください。 
 
(5)CO2が地球の温暖化の原因であることは、歴史上の温度とCO2に相関性がないことから、否定されているし、19世紀後半からの温度上昇が、人為CO2の増加によるという論も、科学的データで否定されてきたのだが、(4)節で述べた根本的な議論は、現在のところ少数の科学者からしか、主張されていません。しかし、この議論がさらに検証されて正しいとなれば、現在の気候変動論は、根本から間違っていて、それに基づく様々な政策(特にCO2削減に関する)も間違い、おそらく、無駄金使いに過ぎないと思われる。実は、そうしたことに気がついて、そうした工場の建設を諦めるという例が増えている。トランプ政権は、CO2削減の無意味さを理解しているようである。 
 ただし、気候変動は、起こっているので、それに基づく被害などをなるべく小さくする努力は必要です。CO2削減は不必要。ただし、石炭燃焼に伴う環境汚染物質(SO2その他)の放出を削減する努力など、環境汚染の削減は必要です。 
 
[1] Thomas Allmendinger, The Real Cause of Global Warming and its Consequences on Climate Policy, SciFed Journal of Global Warming, 2018, 2:1; Thomas Allmendinger, The Refutation of the Climate Greenhouse Theory and a Proposal for a Hopeful Alternative, Environ. Pollut. Climate Change, 2017, 1:2 
[2] www.researchgate.net/publication/317570648 
[3] Robert Ian Holmes, Earth Sciences, 2017; 6(6): 157-163; 2018; 7: 107-123 
https://doi.org/10.11648/j.earth.20170606.18 
[4] https://vsa9.blogspot.com/2024/11/co2-is-not-causing-global-warming.html 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。