2025年11月28日14時48分掲載
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政治
日韓議連 長生炭鉱遺骨返還に向けた協力を共同声明に盛り込む
日韓両国の国会議員で構成される「日韓議員連盟」と「韓日議員連盟」は16日、ソウルで合同総会を開き、政治、経済、外交などのあらゆる分野における相互協力の強化を確認する共同声明を採択した。同声明には、戦時中の事故で多数の朝鮮人労働者が犠牲となった山口県・宇部市の長生(ちょうせい)炭鉱をめぐり、遺骨収集と身元確認で協力する内容も盛り込まれた。長生炭鉱の問題が議連レベルで正式に扱われるのは初めてのことであり、歴史問題の実務的解決に向けた大きな一歩となった。
長生炭鉱では1942年、坑道に海水が流れ込む事故により183人の作業員が亡くなり、犠牲者の中には朝鮮半島から動員された労働者も多数含まれていた。事故後、坑道は封鎖され、長らく遺骨調査が行われないまま今日に至ったが、近年になって市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以下、「刻む会」)が独自に調査を進め、犠牲者の遺骨の一部が収容された。今後、遺族の特定や遺骨の返還には日韓両政府の協力が不可欠と指摘されている。
共同声明が出されたことを受け、「刻む会」共同代表の井上洋子さんは、「長生炭鉱の問題について初めて共同声明が出されたことを嬉しく思う。犠牲者の名誉と尊厳を回復するためには、遺骨を収容して古里に還さなくてはならないが、共同声明が日本政府を動かす力になると信じている」とした。また、今後の取り組みについて、「日韓両政府が協力して遺骨返還事業に取り組む気運を高めるためにも、未だ海底に残る遺骨の収容作業を進める」と意気込みを語った。
「刻む会」事務局長の上田慶司さんは、「共同声明が出たことで1つの到達点に達した。当初、長生炭鉱の問題が合同総会の議題に上がるのを否定する流れがあったが、結果的に共同声明に盛り込まれたのは、韓国のみならず日本の与野党の国会議員の中で耳を傾けてくれる人がいたからだ」と述べた。
今回の声明は、長く放置されてきた歴史問題に対し、日韓の議会が初めて共同で前向きな姿勢を示した点で注目される。特に、遺骨返還という人道的課題で一致したことは、政治関係の変動を超えて継続的な協力が期待できる領域でもある。遺骨の帰還は、被害者の尊厳の回復であると同時に、両国が歴史に向き合う姿勢を社会に示す象徴的な出来事となる。議連の声明が実効性を持つ取り組みへと発展するかが、今後の焦点となる。
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