2026年01月28日20時03分掲載
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核・原子力
制御不能だった30年 柏崎刈羽6号機制御棒の設定不備が暴いた原子力規制の欠陥 山崎久隆
柏崎刈羽6号機制御棒の設定不備が暴いた原子力規制の欠陥 暴走事故を招く「死んだインターロック(事故を防ぐ仕組み)」 科学を無視し教訓を忘却した再稼働は 次の人災へのカウントダウンだ
1.なぜ「設定ミス」が致命的なのか
原子炉の反応度制御において、制御棒は中性子経済を物理的に制限する唯一のデバイスである。136万キロワットABWR(改良型沸騰水型軽水炉)では、炉心内に205本の制御棒が配置される。
特定の組み合わせで強引に引き抜いたら局所的に中性子束が指数関数的に増大する「反応度事故」が発生する可能性がある。
今回、柏崎刈羽6号機で発覚した「制御棒価値ミニマイザ(RWM)」の設定ミスは、1999年の志賀原発臨界事故のような「誤操作による反応度投入事故」を防ぐための、物理的な最後のインターロック(阻止機構)である。
この設定が間違っていたことは、設計上「絶対に引き抜いてはいけない組み合わせ」で制御棒を操作しても、システムがそれを「正常」と誤認してパスさせてしまう状態が30年間続いていたことを意味する。
2.30年間の盲点は技術的「無能」と「不作為」の共犯
驚くべきは、1996年の運転開始から一度もこの設定ミスが修正されなかったという事実だ。東京電力の無能ぶりは心底腹が立つ。
幾多の定期検査、そして福島第一原発事故後の「徹底した点検」を潜り抜けてこの不備が見過ごされた。
これは、東電の技術陣がシステムのロジックを理解せず、ただ
「マニュアル上の数字」をなぞるだけの形骸化した作業に従事していた証拠である。
規制当局の機能不全も到底許されない。原子力規制委員会および規制庁は、東電の「適格性」を審査したはずだ。
しかし、原子炉の安全停止という最も基本的なロジックの正当性すら、規制当局は30年間一度も検証できていなかった。
これは専門家集団としての「完全な敗北」であり、行政による不作為に他ならない。
3.志賀原発事故の教訓をドブに捨てた罪
1999年、志賀原発1号機では制御棒3本が自重で抜け落ち、図らずも臨界に達した。この事故の最大級の教訓は「多重防護の徹底」であったはずだ。
柏崎刈羽のケースは、この教訓を真っ向から踏みにじっている。
人為的ミスが起きた際、それを食い止めるべき機能が働かない状態になっていたことから、東電は「志賀原発と同じ事故、あるいはそれ以上の惨事」を引き起こす準備を、再稼働の名の下に進めていたのである。
4.規制委員会の「免罪符」発行プロセスを糾弾する
規制委員会はこれまで、IDカードの不正利用や核物質防護の不備といった東電の「組織的腐敗」を認識しながらも、最終的には再稼働に向けた手続きを優先させてきた。
今回の設定ミスは、東電が「ソフト面(システムの論理構造)」においても統治能力を喪失していることを裏付けている。
このような致命的な欠陥を指摘できないままで、再稼働を認可した規制委の審査プロセスには、科学的客観性など微塵も存在しない。
そこにあるのは「再稼働」という政治的結論に帳尻を合わせるための、恣意的な適合判定である。
5.更に発報する警報は何を警告しているのか
柏崎刈羽原発6号機は、この設定ミスを「修正した」として、21日に再起動を強行した。
ところがその直後にこんどは、制御棒の警報が鳴り始めた。電気的な異常かと考え、電子部品を交換したが警報は鳴り止まず、結局22日に原子炉の停止操作に入ったという。
今度の警報は未だに何が原因か分かっていない。
物理的に「暴走を防ぐ自動ブレーキ」が壊れたまま、公道を走り出そうとしている爆走車と同じだ。
30年間も基本的な安全設定すら確認できなかった組織に、核分裂反応を制御する資格などない。
また、それを見落とし続けた規制当局に、国民の安全を守る能力はない。
今回の設定ミスと度重なった警報発報は「個別の修正」で終わらせるのではなく、東電の運転適格性を根本から再定義しなければならない。
機能不全に陥った規制委の審査体制を解体・再構築すべきだ。
科学を無視し、教訓を忘却した再稼働は、次の人災へのカウントダウンに他ならない。
(たんぽぽ舎共同代表)
【TMM:No5322】より。
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