2026年03月04日19時41分掲載
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欧州
右派政権の選挙法改革案~ チャオ!イタリア通信
2月26日、現政権のメローニ首相が党首を務める「イタリアの同胞」「同盟」などを中心とした、中道右派グループが署名した選挙法改革案を国会に提出した。今後、国会で議論が行われる予定だ。この選挙法案には、野党からも知識人たちからも懸念が出ている。
まず、この選挙法案で改革派が目的としていることは、「政治的多元主義を尊重しつつ、より安定した議会多数派を実現すること」となっている。ジャーナリスト(ラ・スタンパ紙の元編集長)のマッシモ・ジャンニーニ氏は、この選挙法案を「これほど大胆な選挙法の改革案はベルルスコーニ政権時代にしか見られなかった。当時も今も、改革の目的は一つだ。対立候補の勝利を阻止するか、少なくとも引き分けに持っていくことだ」と痛烈に批判している。
つまり、「政治的安定」という言葉の裏には、野党の台頭を押さえつけておきたいという与党の目論見が見え見えなのである。
メローニ政権は、2022年に内閣を組んでから、新たな選挙法改革案を模索し始めていた。2017年に改革された現行の選挙法では、比例代表制と小選挙区制が混合されている。新しい改革案では、比例代表制のみになる(ヴァッレ・ダオスタ州とトレンティーノ・アルト=アディジェ州は除く)。現行の選挙法では、小選挙区の人口格差が大きいという問題などがあり、改革の余地があるだろうが、それを現在の政権を持続させるために改革しようとしている。
Youtrend(イタリアの政治、国際政治を中心に話題となっている社会的テーマについて分析、調査、また議論をするサイト)が、この選挙改革案で現在の議席数がどう変わるかをシミュレーションした。
現行の選挙法「ロザッテルム」法では、下院で中道右派は186議席、上院で中道右派は96議席、新しい改革案で計算すると下院で中道右派は228議席、上院で中道右派は113議席を獲得することになる。一方、野党となる中道左派は下院で192議席が147議席、上院では左派は95議席が76議席になる。日本でも、先の総選挙結果で、得票率と議席獲得率がかなりかけ離れたことが話題となっているが、イタリアも現政府を中心とする中道右派連合は、少ない得票率で多くの議席数を獲得できるように選挙法を改革しようとしている。
また、改革案でよく分からないのが、「ボーナス」と呼ばれる議席賞与のようなものだ。それは、全国の有効投票40%以上を獲得した連立政権に適用され、下院では勝利した連立政権に70議席、上院では35議席が追加されるという決まりだ。
さまざまな意見があり、それを代表する議員が国会で議論して、法律を決めていくというのが民主主義だ。この改革案だと、「政治的安定」という言葉のもと、中道右派の政策が通りやすい国会が作られてしまう。
もちろん、野党の民主党、五つ星運動などは反対の姿勢をすぐに表明した。2007年からイタリアに住んで、イタリアは日本と違って、政権が交代する国だなと思っている。それは、その時の政情によって、国民の意思が反映されている証拠だと思う。政権が右派中心になったり、左派中心になったり、そうやってバランスを取っていた政治は、私としては長々と自民党政治が続く日本と違って、ダイナミックでいいなと思っていた。それが、ここ最近イタリアでも政治への関心が薄れてきているという危機感は感じる。そこで、右派連合の、この選挙改革案は、とても危険な方向へ行ってしまうような予感がする。
ロシア・ウクライナの戦争、イスラエルのガザ地区攻撃とイラン攻撃といった戦争が起きている現在、日本もそうだが右派が国会の多数議席を獲得した結果、どういうことが起こるのか、容易に想像できる。右派連合の選挙改革案を阻止できるかどうか、イタリアの民主主義が試されるものだ。
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