2026年03月09日14時29分掲載  無料記事
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入管

「不法滞在者ゼロプラン」で送還の危機 20年以上日本で暮らすスリランカ人男性、院内集会で訴え

在留資格を持たない外国人の送還を進める政府の「不法滞在者ゼロプラン」をめぐり、長年日本で生活してきたスリランカ国籍の男性が送還の危機に直面しているとして、支援者らが3月2日、参院議員会館(東京都千代田区)で院内集会を開いた。仮放免者の現状や入管行政の課題について、当事者や支援団体、国会議員らが発言した。主催は一般社団法人「反貧困ネットワーク」。 
 
支援の対象となっているのは、スリランカ国籍のナビンさんだ。20年以上日本で生活し、日本人の妻と結婚して約10年になる。難民申請はこれまでに2回却下され、現在は仮放免の状態に置かれているが、政府が掲げる「不法滞在者ゼロプラン」のもとで送還の危機に直面しているという。(岩中健介) 
 
 
ナビンさんはなぜ日本に逃れてきたのか。 
 
これまでの説明によれば、スリランカでは父親が反体制的な政治活動を行っており、ナビンさん自身もその活動を支持していた。2003年には複数の暴漢に襲われ、腕を骨折する被害に遭ったという。身の危険を感じたナビンさんは、2004年に日本語学校への留学を機に来日した。 
 
しかし、その後通っていた日本語学校が閉鎖され、在留資格の継続ができなくなった。結果として非正規滞在の状態に置かれることになり、現在までに難民申請を2度行ったものの、いずれも認められていない。 
 
ナビンさんは集会で、長く続く不安の中で生活している現状を語った。「眠れず、食事も喉を通らないことがある」と話し、入管への出頭の際には血圧が200を超え、体調を崩したこともあったという。 
 
また昨年11月には、通院先の医療機関に対し、入管側から健康状態に関する問い合わせがあったという。医師からは、現在の状態を踏まえ慎重な対応が必要だとの見解が示されたと話した。 
 
入管からは、第三国へ出国したうえで一定期間後に再入国する方法を提案されたこともあったという。しかしナビンさんは「第三国で生活する資金もなく、文化も分からない。入管の言葉を信じて出国した人の中には、まだ日本に戻れていない人もいる」と語り、不安をにじませた。 
 
日本人の妻と結婚して10年になるが、現在の制度では配偶者が日本人であっても在留資格が自動的に認められるわけではない。長期間日本で生活し家族を持っていても、送還の対象となり得る現状がある。 
 
反貧困ネットの瀬戸大作事務局長は、「不法滞在者ゼロプラン」以降、仮放免者をめぐる状況が変化していると指摘する。以前は3か月程度だった仮放免の延長期間が、最近では1か月程度と短くなるケースが増えているという。「仮放免の更新のたびに生活の見通しが立たなくなる。精神的な負担は非常に大きい」と述べた。 
 
また、仮放免状態で生活する家族や子どもたちへの影響も広がっているとする。反貧困ネットで仮放免の高校生への奨学金支援などに取り組む金澤伶さんは、「どうせ送還されるのなら勉強しても意味がない、という空気が子どもたちの間で生まれている。将来への希望を持ちにくい状況が続いている」と語った。 
 
この日は国会議員も参加した。立憲民主党の高木真理参院議員は、「長年日本社会の中で生活してきた人々の存在を、現在の制度が十分に受け止めていないのではないか」と述べ、在留資格のあり方について議論が必要だと指摘した。 
 
日本共産党の山添拓参院議員も、「長期間日本で生活してきた人が突然送還の危機に置かれる現状は深刻だ」と述べ、個別事情を踏まえた柔軟な対応の必要性を訴えた。 
 
東京新聞の池尾伸一記者は、仮放免者の子どもへの取材経験を紹介した。学校では政府の「不法滞在者ゼロプラン」が話題になり、「あなたも不法滞在者ではないか」とからかわれる子どももいるという。「政府が外国人犯罪の増加を示唆するような発信をしているが、統計上そのような事実は確認されていない」と指摘した。 
 
また池尾記者は、入管行政の運用が国会で十分に議論されないまま進められている実態にも触れ、「現場では省令や内部運用によって重要な判断が行われている」と述べた。 
 
日本共産党の仁比聡平参院議員は、「非正規滞在はルール違反だと言われるが、そのルールの多くは国会審議を経ていない」と指摘。「人の人生を左右する制度が国会の議論を経ずに運用されている現状は、民主主義の観点からも大きな問題だ」と語った。 
 
政府は、国内に滞在する不法残留者の送還を進めるため「不法滞在者ゼロプラン」を掲げている。一方で支援団体などからは、長期間日本で生活してきた人々や家族を持つ人々への配慮が十分ではないとの批判も出ている。 
 
ナビンさんは集会の最後に、「妻とこれからも日本で一緒に暮らしていきたい」と涙ながらに語った。 


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