2026年03月18日14時03分掲載  無料記事
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入管

「真相は明らかにされていない」 ウィシュマさんの死から5年、新宿で追悼アクション【支援団体「BOND」】 

2021年3月6日、名古屋出入国在留管理局で亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん。その命日から5年となる3月6日、新宿駅南口では支援団体らによる追悼アクションが行われた。 
 
主催したのは関東エリアを中心に収容者支援などを行う「BOND」(外国人労働者・難民とともに歩む会)。同団体が所属する入管闘争市民連合の呼びかけにより、名古屋や大阪など各地でも同様のスタンディングが実施された。 
 
新宿では、参加者がプラカードを掲げて通行人に訴えかけるとともに、ウィシュマさんの死を悼み、黙祷が捧げられた。 
 
 
アクションの中で、BONDメンバーの降旗恵梨さんは「事件から5年が経ったが、真相は十分に明らかにされていない」と訴えた。 
 
遺族は国を相手取った訴訟を通じて責任の所在と再発防止を求めてきたが、入管側は責任を否定し、問題を医療体制の不備に矮小化していると指摘する。約295時間に及ぶ監視カメラ映像も全面開示されておらず、「遺族の知る権利に向き合っていない」と批判した。 
 
裁判では、適切な医療対応が行われていれば救命の可能性があったとする証言も出ており、降旗さんは「個別の対応の問題ではなく、入管体制そのものが問われている」と強調した。 
 
 
この問題の背景には、現在政府が進める外国人政策がある。 
 
政府は「不法滞在者ゼロプラン」を掲げ、退去強制が確定した外国人の送還を徹底する方針を打ち出している。入管庁は制度の適正化を理由に挙げる。 
 
しかし支援団体側は、この政策が「帰国できない事情を抱えた人々の存在」を十分に織り込んでいないと批判する。難民申請中であっても保護が認められないケースや、健康上の理由、家族との生活基盤などを抱えたまま送還対象とされる可能性があるためだ。 
 
さらに、収容や送還の判断が行政内部で完結しやすく、国会での十分な議論や司法的なチェックが及びにくい構造も問題視されている。 
 
この日アクションに参加した参議院議員のラサール石井氏は、「外国人を一括して問題視するような風潮が強まっている」と指摘する。 
日本で暮らす外国人の中には、DV被害や仲介業者による搾取など、帰国が困難な事情を抱える人も少なくない。そうした人々まで一律に送還対象とすることは現実に即していないとし、「結果として人権侵害につながりかねない」と訴えた。 
 
さらに過去の政策では、在留資格の付与によって問題の解消が図られた例もあるとして、「排除ではなく共生の視点が必要だ」と述べた。 
 
また、現場からは制度と実態の乖離を指摘する声も上がった。 
 
参加者の一人は、日本社会が外国人労働力に依存している現状に触れ、「必要なときには受け入れ、問題が可視化されると排除に傾く構造がある」と語る。 
 
また、ウィシュマさんが衰弱状態にありながら十分な医療措置を受けられなかった点について、「なぜあのような対応が起きたのか、説明が尽くされていない」として、検証の必要性を訴えた。 
 
収容施設の現状についても、改善は道半ばだという。 
BONDの学生メンバーは、面会活動を通じて把握している実態として、「医療体制や処遇の問題は現在も大きく変わっていない」と指摘する。 
 
帰国できない事情を抱えた人々が長期にわたり不安定な状態に置かれている現状を踏まえ、「収容や送還の強化だけでは問題は解決しない」と語った。 
 
アクションでは、ウィシュマさんの母からのメッセージも紹介された。 
娘を失ってから5年が経った今もなお、真相解明を求め続けているといい、「支えてくれる人々への感謝とともに、これからも共に歩んでほしい」との思いが伝えられた。 
 
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ウィシュマさんの死から5年。 
真相解明が待たれるなかで、同じ制度のもとに置かれた人々の状況は今も変わっていないとの指摘もある。 
事件を過去の出来事として区切るのか、それとも現在の問題として向き合うのか。その判断は、これからの制度のあり方に直結する。 


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