2026年06月11日12時18分掲載  無料記事
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政治

ホルムズ通航「日本はイランと個別交渉を」 元首相・研究者らが政府に要請

米国・イスラエルとイランの戦闘を背景に、ホルムズ海峡周辺の船舶通航が不安定化する中、元職・前職国会議員や研究者、エネルギー事業関係者らが6月8日、衆議院第一議員会館で「ホルムズ独自友好交渉へ」と題する記者会見を開いた。 
 
会見には、小林正弥・千葉大学教授(呼びかけ人代表)、鳩山友紀夫元内閣総理大臣、境野春彦・コネクトエネルギー合同会社CEO、宮田律・現代イスラム研究センター理事長、竹信三恵子・和光大学名誉教授らが出席した。 
 
主催した「生活と平和」提言事務局は、日本政府に対し、ホルムズ海峡における日本関係船舶の安全通過を実現するため、イラン政府と直接かつ友好的に個別交渉を行うよう求めた。 
 
政府は、原油やナフサについて代替調達や在庫活用で供給継続は可能だと説明している。ホルムズ海峡の通航についても、首脳・外相レベルを含め、日本を含むすべての国の船舶が自由で安全に通過できるようイラン側に働きかけているとの立場だ。 
 
これに対し主催側は、政府の対応は「すべての船舶」の自由航行を求める一般論にとどまり、日本関係船舶ごとの具体的な通過調整に踏み込んでいないと批判している。 
 
 
【ホルムズ問題を「生活危機」として訴え】 
 
今回の会見は、5月3日に発表された緊急声明「生活と平和を守るための現実的外交提言――船舶通過の実現と国民生活の安定を求めて」と、同時期に始まったオンライン署名を踏まえたものだ。署名は会見前までに4万筆を超えたという。 
 
声明では、日本政府に対し、イラン政府との直接交渉による船舶の安全通過に加え、物価上昇や供給不足に対応する財政措置、事業者支援、資金繰り支援などを求めている。 
 
呼びかけ人代表の小林氏は会見で、ナフサや石油の供給不安が企業活動や倒産にもつながりかねないと指摘。ホルムズ海峡における日本関係船舶の通過には、日本とイランの歴史的友好関係を生かした直接交渉が不可欠だとした。 
 
主催側は5月11日、発起人のうち6人が駐日イラン大使館で大使と面談したとしている。小林氏によると、面談では、敵国船舶の通過は制限し得る一方、敵国以外の船舶は政府との事前調整によって通過し得るとの説明を受けたという。 
 
主催側は、この面談内容を踏まえ、日本政府が「すべての船舶」の自由航行を求める一般的な働きかけにとどまらず、日本関係船舶ごとにイラン側と個別交渉を行う必要があると主張している。 
 
4月29日には、外務省がペルシャ湾に滞留していた日本関係船舶1隻のホルムズ海峡通過を発表し、政府はこれを「前向きな動き」と受け止めた。同日、出光興産も、子会社が所有する原油タンカー「出光丸」がホルムズ海峡を通過したと明らかにしている。 
 
一方、主催側は、出光丸の通過について、日本政府の個別交渉の成果ではなく、過去の日イラン友好関係を踏まえたイラン政府の判断だったと説明している。 
 
 
【米国産代替では埋まらない「質」の問題】 
 
政府は5月25日の会見で、ホルムズ海峡を経由しない原油の代替調達や備蓄放出により、石油の安定供給を確保できるとの見通しを示した。ナフサについても、中東以外からの代替調達が回復しているとし、在庫活用などによってナフサ由来の石油製品は年を越えて供給継続が可能だとしている。一方で、ナフサの調達量は通常より約2割少ないことも認めている。 
 
政府は代替調達先の多角化を進めており、経済産業省の資料では、米国からの原油調達が大きく増える見通しも示されている。 
 
ただ、会見では、こうした政府説明に対する疑問も示された。エネルギー事業の立場から発言した境野氏は、政府の見通しについて、一定の代替調達が続くことを前提にした楽観的な試算だと批判。今後、各国による原油やナフサの争奪が強まれば、想定通りに調達できる保証はないと指摘した。 
 
境野氏が問題視したのは、単なる輸入量ではなく、輸入している原油やナフサの種類である。米国産原油は一般に中東産に比べて軽く、ガソリンや軽いナフサは取りやすい一方、軽油や重油などは取りにくくなる。日本の産業が必要としてきた原油やナフサと性質が異なれば、輸入量を増やしても十分な代替にはならないとした。 
 
特に不足が懸念されるのが、中東産の重質ナフサである。重質ナフサは、塗料やインクなどの原料につながる成分を得るうえで重要とされる。境野氏は、米国産の軽いナフサを増やしても、中東産の重質ナフサを代替することは難しく、政府の輸入方針は日本の産業構造に合っていないと批判した。 
 
実際、川下の現場では、塗料やシンナーなどをめぐる不足や調達不安が生じている。政府も、塗装事業者などが必要量を調達しにくくなった事例を認めているが、主な原因は供給の偏りや流通の目詰まりだと説明している。これに対し境野氏は、問題は流通だけではなく、政府が代替調達している原油・ナフサの種類そのものにあるとみている。 
 
 
【政府の働きかけは十分なのか】 
 
政府は4月以降、日・イラン首脳電話会談を複数回行い、高市早苗首相がペゼシュキアン大統領に対し、ホルムズ海峡における自由で安全な航行の確保を求めている。6月1日の会談は約15分間で、政府発表では、日本やアジア諸国を含むすべての国の船舶が自由で安全に通過できるよう求めたとされている。 
 
ただ、主催側は、こうした働きかけだけでは日本関係船舶ごとの通過調整には不十分だとしている。 
 
中東・イラン情勢に詳しい宮田氏は、日本政府の対応について、米国ばかりを見て中東諸国を見ていないと批判。日本とイランが100年以上にわたり築いてきた関係を、重要な外交資産として生かすべきだとした。 
 
竹信氏は、外交や安全保障は生活から遠い問題に見られがちだが、実際にはエネルギー供給、物価、賃金、雇用と直結していると指摘した。 
 
主催側は今後、政党、政府、省庁に対し、署名を持って働きかけを行う方針だ。ホルムズ海峡周辺で足止めされている船舶関係者からも、日本政府に具体的な通過調整を求める声が上がっているという。 


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